地域性ってなんだろう

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僕の職場はマレーシア国境にほど近いシンガポール島の北端にある。ここは観光客がうろちょろする都市部とはぜんぜん違う、多摩ニュータウンにも似た殺風景な居住地区だ。

実際、駅前のショッピングモールと十数階建ての高層住宅群しかなく、正直どの駅で降りてもほとんど同じのっぺりした町並みが広大に広がっている。通じるかわからないけど、ミヒャエル・エンデ『モモ』に出てくる「灰色の街」の印象そのままだ。

僕はビール片手に異国をブラつくのが大好きなお散歩好き(お散パー:Osampar → Karoshiみたく世界に広めたい美しい日本語)である。なので天気のいい日は仕事上がりに太陽が低くなった夕方のシンガポール郊外をなんキロも歩きまわっている。

それで、一見のっぺりと特徴がないように見える郊外も、一応違いがあることに気付いた。

北部の街では鶏の丸焼きが人気

ビールを飲んでテクテク歩いていると、腹が減るものだ。とは言えカネはない。選択肢は自然とストリートフードか、スーパーマーケットの二択になる。シンガポールのストリートフードについてはまた別の機会に書くとして、今日はスーパーマーケットに注目したい。

シンガポールのスーパーは大人の事情で政府系資本の大手チェーン店ばっかりだ。品揃えもほとんど同じ。田舎のスーパーで売ってなかったら、都市部に行こうが大規模店舗に行こうが、そもそも大人の事情で国に入ってきていないのでまず手に入らない。

一方、シンガポールのスーパーで面白いのは鶏の丸焼きを売っていることだ。店舗ごとに鶏を丸焼きにするでっかいオーブンが設置されていて、時間によっては焼きたてを買える。まぁ普通のブロイラーなんだけど、やっぱり照り焼きにされたばかりのは絶妙に美味い。しかも1羽まるごと600円くらいで買える。マジで丸焼きなのでちょっと食べるのが大変なんだけど、焼きたてに出くわしたら後先考えずとりあえずビールと一緒に買って、そこら辺の空き地で貪り食うのが習慣になってしまった。正直、超絶変態な外国人として奇異の目で見られていることだろう。

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(実際、憲兵隊みたいのに職質されることも多々あるけど、この憲兵隊みたいののほとんどすでに顔見知りでたいてい顔パス。Osamparの特権である。内緒だよ☆)

で、鳥の丸焼きなのだが

鳥の丸焼きを買い求めるうちに、あることに気付いた。同じ系列のチェーン店にも関わらず、店舗によって鶏の焼きあがる時間が違う。というより、ひっきりなしに焼いてるところと、朝に規定の数だけこしらえて夕方までいい加減に保温するだけに二極化している。

後者に関して朝から晩まで微妙な温度で保温されているため、夕方買ったら糸を引いていた鶏肉ネバネバ事件もあるので、読者の皆様は何卒注意されたし。

で、要するに、鳥の丸焼きの需要が小さい島の北と南でぜんぜん違う。その結果、焼きたての美味しい丸焼きを求めるなら北端へ!ってな「丸焼き南北格差」が生まれている。シンガポールは東京23区くらいの面積しか無い都市国家だ。それでもこんな「地域性」が生じているのは興味深い。

そういえば東京都内にも地域差があるよね

在星日本人のなかには、小さい国で生じたこうした慎ましい地域差を馬鹿にする人もいる。でも東京に当てはめて考えて欲しい。もんじゃ焼きを食べるなら月島だし、韓国料理なら新大久保だし、インド料理なら西葛西だ。個人的には焼き鳥とメンチカツなら吉祥寺を推したい。これらは東京のほんの最近の発展で生じた特化であって、彩り豊かなサブカルチャーだと思う。

シンガポールは歴史の浅い、取るに足らない国であるように書かれることも多い。でも、東京都心がそうであるように、そこに暮らす人々の営みが現在進行形で確実にカラフルな文化を生んでいる。今後も憲兵隊の職質に屈することなくOsamparとして新たな発見を積んでいきたいね。

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