酒場に行ってバーテンダーが幸せそうな国が働きやすい

日本人が海外旅行というと、朝から晩まで予定をびっちり詰め込んで、もっぱら観光地スタンプラリーみたいな様相だ。

でも浅草寺の赤ちょうちんを観て、スカイツリーに登っても、東京の下町の人たちの暮らしぶりは見えてこない。

僕は外国に行っても観光せず、適度に人通りのある細道でグダグダとビール飲むだけだ。それが一番、現地の生活が垣間見られて面白い。

とはいえ野外で昼間からビール飲める国というのは実はあまりない。

法律うんぬんに関係なく、例えば東京郊外の静かな住宅地で、汚らしい髭面のオッサンがウンコ座りしてビール飲んでたら通報されちゃうだろう。

それに、宗教色が強い国はアルコールに対して否定的な人が多い。人々の暮らしぶりを観たいのに、地元の人から疎まれてしまっては本末転倒だ。

そういう時はBARに行く。

酒飲みは世界中どこにでもいる。イスラム色が強い国のイスラム教徒でさえ、酒を飲む人は普通にいる。でもさすがに世間体ってヤツがあるので、公に酔っ払うわけにもいかないらしく、そういう人たちもBARに集まる。

そんなわけで、アルコールに厳しい国のBARは、さながら酒飲みのサンクチュアリみたいだ。

酔った時が本性

人間、酔っ払った時の言動が本性だ。

真っ赤な顔でゲタゲタ笑ってるオッサンは本当に陽気な人だし、日頃の不満に管を巻くお姐さんはシラフでも周りの全てにイライラしている。

だから下町の飲み屋というのは、その国の人達を観察するのにこの上ない場所だ。

例えば日本。

たまに帰国して赤ちょうちんや夜のBARに入ると、女性が多くてびっくりする。

酒場に男性しかいない国は多い。チラホラ女性がいてもその道のプロの方だったり。それに飲酒が後ろめたい文化だと、例え合法に営業している店でもアングラっぽい雰囲気を纏う。そんなんじゃ女性がフラっといっぱい引っ掛けるには勇気がいるだろう。

そんな中、日本の居酒屋ではオッサンの品のないガハハという笑い声に混じって、けたたましい女性の声も聞こえてくる。盛り場で女性達が大声で話せるのは、平和で良い国だと思う。

他には、各テーブルをチラ見すると、日本のコミュニケーションとは上下関係の上に成り立っているのがよく分かる。僕はたくさんの声から必要な音を拾えないので会話の内容はわからない。それでも、宴席を見ればその中で誰が一番エラいのか一目瞭然。

仕事ならわかるけど、私服で来ている若い人たちのテーブルでもそんなだから、息苦しくなる。

労働環境はBARに出る

そんなわけで、本性丸出しの人たちを相手するバーテンダーや飲み屋のスタッフを見れば、その国の労働環境が透けて見える。海外を放浪して次の食い扶持に悩んでいた時、BARの人間観察のテーマはもっぱら「労働環境」になった。

中でもバーテンダーの表情がわかりやすい。

例えばシンガポールのBARで働いている人は、なんとなく表情がない。仏頂面。

バーテンダーの本領である凛とした立ち振舞いや、粋な会話力みたいな概念を、そもそも持ち合わせていない人をよく見る。おそらく彼らは「酒を混ぜる人」と認識してバーテンダーをやってるし、実際その程度の給料しか貰えないんだろう。

シンガポールはタックスヘイブンとして、先進国から有名企業を誘致して急成長した国だ。だからシンガポール人の多くは今でも外資系大企業に務め、外国人上司の下で働いている。

そしてシンガポールのBARには白人をはじめ外国人が多い。なので「俺の国でガイジンがデカい顔しやがって」って思っているのがバーテンダーの態度に出ちゃってる。

まだシンガポールに住み着くなんて思ってもみなかった頃、そんな酒場の雰囲気を垣間見て、シンガポール人にとってシンガポールの労働環境は満足できるものではないんだと感じた。

海外就活の参考に

就職面接は、求職者側が企業や未来の上司を品定めする場でもある。

「俺の国でガイジンがデカい顔しやがって」なんて思っている上司のもとでは絶対働きたくない。僕は外国人に対して卑屈になっている人が一定数いることを事前に知っていたので、初めての海外就活で大いに役に立った。

そんなわけで、異国のBAR巡りは面白い。みなさんも世界遺産に飽きたら、ビール片手に人間観察してみてはいかがでしょうか。