中国を三等寝台列車で旅した人間模様



怒涛の切符争奪戦から3日後、列車は定刻に上海南駅を出た。

切符争奪戦については昨日の記事を読んでね(=^・・^=)!

上海の居心地の良さで芽生えたニワカ中国愛が、駅の切符売場でズタボロになった話
沈没バックパッカーの朝は遅い。 この日も上海のホステルで目覚めたらすでに昼を過ぎていた。 でも昨夜はまぁ頑張った。中国語のWeb...

中国の長距離列車は車長も運行距離もめっちゃ長い。今回僕が乗車する上海から南寧までは約2000km。日本だと札幌から福岡までに当たる距離を、26時間かけて駆け抜けることになる。

だから車両も長い。個室で至れり尽くせりの1等寝台車、コンパートメントに仕切られている2等寝台車、そして幅60cmの激狭三段ベッドの3等寝台車、さらに座席車両も各等級ガッツリ連結され、食堂車まである。

切符争奪戦があまりに苛烈だったので乗車時も殴り合いくらいは覚悟していた。でも案内のお姉さん(美人)についていったら、予約したとおりの席になんのトラブルもなくたどり着けた。三段ベッドの三段目。一番上のベッドに寝っ転がる。ウワサには聞いていたけど本当に狭い。そして天井が近い。これは夜トイレに起きたら絶対頭をぶつけるパターン。

とは言え、これから26時間の安全がとりあえず確保されたようで、安堵した。



抗日ドラマとルージュの伝言

車内の全員が始発駅「上海南」から乗ってきたはずなのに、三等寝台の客層は僕の知ってる上海の人と全然違う。まぁ切符争奪戦からお察しではあったけど、本当にお里が知れる系ばかりで思わず耳栓を装着した。

上海には中国を代表するLCC春秋航空がある。そしてちょうど衝突事故を起こして埋められたばかりだったとは言え、中国新幹線「和諧号」だってある。

そんな中、わざわざ幅60cmのベッドで26時間も耐える酔狂は、まぁそういう層ということだ。

日本軍がメチャクチャやった後で中国人ヒーローに討伐される、有名な「抗日ドラマ」を見ているオッサンが今夜の隣人。抗日映画はまぁ時代劇みたいなものなので別に気にしないにしても、スマホのボリュームMAXで見るのは止めてほしい。そしてそんなMAX爺があっちこっちにいる。当然、音がよく聞こえないので全員がボリュームを上げ、喧騒に負けないよう全員が怒鳴るように会話する。

そんな殺伐とした車内に唐突に流れ始める松任谷由実「ルージュの伝言」笑

ちょっともう全方位にカオスすぎる。夕暮れを知らせる車内放送っぽいんだけど、お前ら親日なのか反日なのかハッキリせいよ(=^・・^;=)

でもまぁ魔女の宅急便を知っている僕からしたら、不安な気持ちを残したまま列車で夕暮れの街を後にするのにこれ以上のBGMは無かろう。車掌さん、ナイス選曲!

ケン君アル!

日が暮れたので車窓を眺めるのを止め、上海から持参した舶来品の日本酒をチビチビやり始めた。

すると唐突に「日本人デスカ?」という声。三段ベッドの一番上から見下ろすと、通路にペロンとした白い肌をした中学生くらいの少年が立っていた。どうやら僕が読んでいた中国語の参考書を見て声をかけてきたらしい。

マズい。こんなに抗日ドラマが蔓延している車内で、日本鬼子とバレたらリンチされてしまうのでは…。

「ケン、デス」「スラムダンクが好きデス」

ああ良かった。そういう系男子か。

進撃の韓国ドラマに圧されて、海外における日本の芸能界は見る影もない。だけど今だに日本のアニメとマンガは「ある特定の層」に神通力がある。それにしてもワンピースやクレヨンしんちゃんならまだしも、スラムダンクとは渋いね。

「兄がイル」

なるほど(=^・・^=)!それにしてもアニメだけでそんな喋れるなんてスゴい!僕は中国語2年やってるけどこのザマで。

「それで質問がありマス!」「中国人キャラがアルアルと言うのはなぜ?」

うわ、微妙に気まずい質問だ…。しかし僕に出会ったケン君、君は幸運だ。的確な正解を知っている。小さくて可愛らしい系の名詞に付ける「儿(ぁる)」という漢字。花儿とか小孩儿みたいな。この音が日本語にはないので、中国人キャラの特徴になったのさ!

…と教えたんだけどガセだった(=^・・^;=)

日本が満州を支配していた時、現地人と意思疎通をはかるために作った簡易日本語「協和語」に由来するらしい。

もう7年前になるけど、ケン君、ごめん(=^・・^;=)

彼はお高い2等寝台の乗客で、家族と一緒に僕の知らない街へ行く途中と言う。里帰り?と聞くと「家族のこと」とボソっという。なにやら詮索されたくない雰囲気を感じたので、スラムダンクに話題を逸らした。

そんなわけで2人して比較的静かな彼の車両に移り、日本語と中国語と英語が交じる賑やかな夜が始まった。

2000字超えちゃったので明日につづく!

ちなみに日本アニメの最後に書かれる「つづく」に見覚えがある外国人は多く、東南アジアでは「つづく」Tシャツや「つづく」スマホケースなどが売られているぞ。