電車の運転士の仕事はしばらく無くならない

東京で電車が止まっているって言えば首都圏3500万人のうちの血迷ったのが飛び込んじゃったんだろうなーってな日常である。なお、僕が学生の頃は「皆に迷惑かけやがって」ななどと考えていたのだけど、社会人2年目くらいから「苦しまずに遂げられたのだろうか」などと当事者メンタルになってる自分に気付いて、うつ病だと自覚した経緯がある。鉄道自殺などという狂気の沙汰は、青色LEDやホームドアなどという小手先で解消するのではなく、グモってでも死にたいと思う人が1人もいない社会になることで根絶して欲しいと思う。

ここシンガポールでも電車が止まることはあるけど、日本のように完全に止まってしまうのに遭遇するのは年に数回。ホームドアが100%完備のシンガポールの鉄道において、電車が止まる事態は大抵機械の故障だ。踏切が存在しないので当然踏切事故もない。去年、保線工が轢死する痛ましい事故が起こった。けどこれはかなり珍しい。

シンガポールの鉄道は超安全と思う。国が小さいから比較的少ない予算で線路の高架化と地中化を実現できるのだろうけど、最初の建設段階からこれを全路線で徹底したのは間違いなく慧眼だ。

ダイヤという概念がないのかも

日本では電車やバスには時刻表があり、その時刻表から5分遅れという計算の仕方をする。ところがシンガポールをはじめ多くの国では駅に時刻表がなく、平日の朝は5分間隔、休日の昼間は8分間隔、などと運行間隔がちっちゃく書いてあるだけなのが一般的だ。つまりこれは全てが各駅停車で、おそらくダイヤという概念に依存せずに運行している。

各駅停車しかないのは運転を自動化しやすいのがメリットだ。シンガポールの5路線のうち、黄・紫・青の3線は運転手がいない自動運転。日本で言えばお台場のユリカモメのような感じ。移住した当初はとても先進的だと驚いたものだ。

ただ、列車ごとに速度を変えて追い抜くことができず、快速や急行を走らせることができなくなる。小国シンガポールといえど東京23区くらいの国土があり、世界有数の人口密度を誇る。アジア随一の大都市に発展した今、この国に快速電車がないのは運送効率が悪いと思う。

運行システムが故障するとトランシーバー人力運転になる

先日はダウンタウン・ラインという青線が故障していた。無人運転なのでいつも運転台はケースの中にしまわれているのだけど、この日は普通の電車と同じように運転士が速度レバーをつかって運転していた。

どうやら信号システムが故障してしまったらしく、なんと司令塔からの指示をトランシーバーで受けて発車していた。制限速度は20km/hで固定。たぶん、運行している全列車がトランシーバーからの合図で一斉に駅を出てノロノロ運転し、次の駅の手前で一旦停止。ホームの安全を確認してから進入。客の昇降がおわり、ドアが閉まったことを全列車にトランシーバーで確認。また合図で一斉に駅を発車というわけだ。

いつものハイテク自動運行がウソのような超アナログ。機械化は先進的だけど、故障した場合の影響がとても大きいということを目の当たりにした。

運転士の仕事はしばらく無くならない

電車の運転士は、近い将来機械化されて無くなる仕事と言われている。その場合、故障時の運用は誰がやるのか。また、日本のように高架化やホームドアが未整備で、快速・急行・快速急行などなど複雑なダイヤで柔軟に運行するためには、まだまだ長い間、熟練の運転技術が必要とされるだろうと思った。運転士の仕事はしばらく無くならない。