シンガポールに移住して脱社畜したつもりだったけど、今年に入ってから祝日は自ら進んで休日出勤している。というのも10万円のオーダーメイドイヤホンを買ってしまったため、休日出勤手当てがないと首が回らないのだ。あぁ貧乏。
買ったのはこれ。Westone ES50。米国製のオーダーメイド・イヤホンで、ひとりずつ耳型を採取して米国に送り、自分の耳に完全フィットするように手作りしてくれる。カスタム・インイヤー・モニター(IEM)という種類の製品で、元々はミュージシャンがライブで演奏するときに、自分の楽器が出した音を確認するための物だ。だから音質もさることながら、普通のイヤホンと比べてかなり高い遮音性がある。
しかもWestoneのESシリーズは耳の奥に入る部分がシリコン素材で出来ている。このフレックス・カナルと呼ばれるシリコンのお陰で、他社のIEMと比べても格段に高い遮音性を実現している。
高級耳栓としてのカスタムIEM
僕の脳は雑念で常にザワザワしている。何もしてないのに要らぬことが次から次へと湧いてきて無駄に疲れる。集中力もなく、やるべきことがあるのに周りの物音に意識を引っ張られて成果物を完成させるのにひどく時間がかかる。さらに、ふと安心した時など、昔の失敗や恥ずかしい行動を突然思い出して自己嫌悪に苛まれる「フラッシュバック」という症状もある。フラッシュバックは酷くメンタルを削られるのでぜひとも止めたい。
僕は高校生になった頃にイヤホンが耳に刺さっているときは比較的集中が続きやすいのに気付いた。別に音楽を流しているわけじゃない。ただ、イヤホンが耳栓のように雑音を減らしてくれるので、邪念の元になるトリガーが減るのだ。
そこからイヤホンへのこだわりが始まった。だから普通の音響マニアは音質を重視するけど、僕がもっぱらこだわるのは「遮音性」。それなら耳栓でいいじゃん!というツッコミは自分自身で何回もした。実際、耳栓に切り替えたことも何度もある。というのも、注意力散漫すぎてイヤホンのケーブルをすぐブチ切っちゃうので、出来ることなら取り回しの良い耳栓の方がよいのだ。
「今」に意識を集中するオーディオブック
意識を過去に向けると後悔に、未来に向けると不安にさいなまれる。人間とはかくも面倒くさい生き物なのだから「今」だけを見て生きればメンタルの平穏を保てる。
このアイデアは『最高の休息法』『嫌われる勇気』などのベストセラー本で紹介されているベーシックなものだ。瞑想も「今」の呼吸に意識を集中するという意味で同じコンセプトと言える。
そういえば以前ネットでバズった「習慣化した作業を左手でやるという鬱病対策」も、利き手じゃない左でやることで「今」やっている作業そのものを強く意識せざるを得ない状況を作るという話だった。確かに実際にマウスを左手で操作すると、脳に余裕がなくなって雑念は生まれない。目下練習中の瞑想でも同じ効果を感じる。
でも一日中マウスをいじっているわけじゃないし、瞑想も時と場所を選ぶ。そこでもっと手っ取り早く「今」に集中力する方法が、僕にとってはオーディオブックなんだ。
物語を音声で聴くと落ち着く。「物語を追っている今」に集中できるわけだ。そういう意味では本を読むのも好きだけど、やっぱり耳から入ってくる雑音で意識を持ってかれて同じような効果は得られない。眼精疲労は鬱の元だというのもある。
母語である日本語は簡単なので音声を聴いても脳に余裕が残っていて効果が薄い。そこで最近はやるべき作業がないリラックスタイムに、もっぱらハリーポッターの音声版を英語でひたすら流している。ハリー・ポッターであるべき深い理由はないけど、音声データが簡単に手に入るのと、英語のレベルが僕に丁度いいこと、そして「賢者の石」から「死の秘宝」まで生活しながら聴き通すのに1ヶ月くらいかかるので飽きないというのがある。最初に戻ると適度にストーリーを忘れている。
BBCニュースのポッドキャストとか、もっと身になる音声コンテンツも試したんだけど、時事ネタは刺激が強すぎるのと英語が難しいのでリラックスして聴く方法がわからなかった。
遮音性の高いイヤホンで脳のザワザワを鎮める
そんなわけで、休日出勤してまで高級イヤホンWestone ES50を手に入れた理由はこんな感じ。やるべき作業がある時は高性能耳栓として使って集中力を維持する。電車や散歩中など雑念でザワザワしやすいリラックスタイムにはオーディオブックを高音質で楽しんでいる。同じような悩みがある人にはお勧め。