多文化共生国家シンガポールで全員参加イベントは大変

日本の会社は何かにつけて宴席を設けるのが好きだ。新年会、忘年会、歓送迎会、決起会、などなど迷惑極まりない。やりたい奴だけ勝手にやってくれ。僕は会社のイベントが心底嫌いで、理由をつけてはサボっていた。殺した親戚は数知れず。

そして誠に遺憾ながら、シンガポールの米系企業に転職した今も、たまに会社のイベントに出なければいけない。外資企業にダルいイベントなど存在しないと決めつけていたけど、世の中そんなに甘くないらしい。

とはいえここは多民族国家シンガポール。日本のように適当な居酒屋で、というわけにいかない。何をするのかと思ったら「エビ釣り」だそうで。えっ(=^・・^=)?

食べられないものが多すぎる

シンガポールにはイスラム教徒がたくさんいる。マレー系シンガポール人はもちろん、一部のインド系や、近隣イスラム文化圏からの労働者などだ。彼らは酒を飲まないし、酒の席に無理やり同席させるのはNG行為だ。

そんなわけで、会食メインの会社イベントでは、アルコール無しのハラル料理になる。ハラルとは、豚肉やアルコールなどコーランで禁忌とされている食べ物を使用せず、イスラムの教えに沿って調理されたことを示す認証制度のようなものだ。

さらにインド系ヒンドゥー教徒は牛肉が食べられない。また、シンガポールの仏教徒、キリスト教徒にも牛肉を避ける人が結構いる。何人かに理由を聞くと「牛は賢い生き物だから」だそうで。捕鯨に反対する根腐れ白人と同じメンタリティじゃないか。豚や鶏に失礼な話だし、選民思想にも繋がると思うのだけど…。

この段階ですでに鶏肉と魚しか残っていないのだが、ここでベジタリアン様の登場である。完全菜食主義ビーガンまでは徹底してないけど、動物性タンパクを避ける人は宗教に関わらず結構いる。卵や乳製品までは食べるというエギタリアンもいるので「菜食主義」といっても安易に一括りに出来ず気を使う。

さらにさらに、東南アジアには野菜嫌いが多い。これは宗教とか関係なく単なる偏食なのだけど。

東南アジアには野菜嫌いが多くジャンクフードに味覚をやられてる
このまえ友達と昼飯を食ったんだけど、メニューが違うにも関わらず彼らの飯が全体的に茶色くて、ざっくり言うと油で炒めた炭水化物と肉って感じ。なんかもっと野菜食えよっていったら、手元のライムジュースを指差し...

あれあれ、何も食べられなくなっちゃったぞw

シンガポールには本当にいろんな人が住んでいる。これじゃ皆で楽しめる料理はあり得ない。宗教に配慮するとハラルの鶏肉と魚しか食べられないけど、ベジタリアンはこれもNGなので野菜しか残らない。でも野菜嫌い多数。みんなで飢えるしかない。

苦肉の策として、シンガポールの会食イベントはビュッフェ形式になることが多い。ハラル・ベジタリアン・何でも食う野蛮人用と、ご丁寧に三種類用意される。こういう複雑な食事情に特化したケータリング業者がシンガポールには多数ある。素晴らしい。

スポーツイベントは障害と年齢がネック

シンガポールは世界でも屈指の働きやすい国だ。これは健常者が働きやすいのはもちろん、障害者や高齢者も特に区別されること無くごく自然にオフィスにいる。この職場環境は先進的でとても良いことだ。しかも、僕にとって害でしかない全員強制参加のスポーツイベントが企画しづらくなって更に良い。多様性バンザイ。

フットサルやボーリングなどのオフィスレクリエーションの定番は、身体が不自由な人を疎外することになる。車椅子でもなんとか参加できるのがビリヤード。とはいえやっぱり身体が不自由だとハンデになってしまうので微妙だ。

そんな感じで、たいてい会社が協賛しているマラソン大会に有志で参加するようなカタチに落ち着く。自由参加。なんと素晴らしい。

カラオケはみんな知っている曲がない

カラオケも会社イベントにはつきものだ。ところがコレも盛り上がらない。

日本人同士でも世代が違うと知らない歌ばかりでシラケるというのに、全然違う文化で育った世代も言語も違う人達が集まって、いったい何を歌うというのだ。米系企業なので同僚は全員英語を話す。でも話せるからといって英語で歌えるとは限らない。

それぞれ母国の歌を披露すれば異文化交流になって面白いと考えるでしょう。でも素人が歌うカラオケなんぞ、ほとんどの人は聞くに堪えないほど下手くそなんだよ。聞いたこともない歌詞も読めない歌を、外れた音程で何時間も爆音で聞かされるのは拷問でしか無い。

というわけで強制参加のカラオケ大会はシンガポールでは企画しづらい。素晴らしい。

そこでエビ釣りですよ

結局、シンガポールの全員参加イベントは「エビ釣り」に落ち着く。

エビ釣りとは釣り堀に撒かれたザリガニのような淡水エビを、これまたザリガニ釣りにつかう短い釣り竿でゲットするというもの。つまらなそうでしょう。うん、超絶つまらないのだよ。

釣り針にエサをつけてお池に垂れておけばザクザク釣れるので工夫のしようもない。だから初めての人も10分で飽きる。しかも茶色いドロ水から上がってきたエビなんて進んで食べたいものじゃない。たくさん釣れたところで持て余す。

それなのにシンガポールにはエビ釣り場がたくさんある。移住した当初はシンガポールの人はこんな暇な娯楽が好きなのかと絶句したものだけど、ちゃんと正社員として働き始めたらその必要性を理解できた。

エビ釣りなら、宗教や文化や健康状態が違う人たちが集まっても同じ時間を共有できる。エビを食べられないなら同僚にあげればいいし、殺生したくなければ釣った後でリリースすればいい。とはいえ、もうちょっと何か面白いことはないのかな。

というわけで今日は弊社のエビ釣り大会。まぁ給料の発生する定時内で行われるだけマシ。しゃーねー、行ってきます(=^・・^=)

※エビ釣りそのものに付いては別に記事に詳しく書きました。

http://nameless.life/post-1657/