シンガポールで個人年金と医療保険を買おうとした話

海外移住するにあたり誰しも悩むのが、海外在留届けを提出するかどうか。いわゆる「住民票を抜く」という手続きで、これを済ますと日本で納税する義務、国民年金を支払う義務を免除されるかわりに、日本の医療保険に加入できなくなり、地方参政権も剥奪される。なお、日本国籍はあるので国政選挙には手続きのうえ現地の日本大使館で投票できる。

若い世代にとって国家的詐欺である年金から解放されるのはメリットだけど、歯科治療を含むどんな疾病でも3割負担という破格の医療保険から見放されるリスクも孕む。これがため持病がある人などはあえて住民票を抜かずに、日本に居住していることにしたまま実際には海外移住している人もいる。

医療保険と年金は頭痛の種

僕は貧乏だし、年金払いたくないし、常に医者にかかるほど不健康なわけじゃない。なので悩む要素はあまりなく、素直に海外在留届を提出して「在外邦人」になった。

とはいえ犯罪率で日本よりも安全なシンガポールであっても、万が一の事態はいつでも起こりうる。一番可能性があるのは交通事故だ。あと、まだ身体が動くからこんな風にフラフラしてられるけど、老後の備えも必要だろう。

シンガポール最大のリスク、交通事故。名古屋走りもびっくりなキアス走りとマリオカート走り。
世界でも圧倒的に安全な国、シンガポール。この国で暮らす上で一番のリスクは交通事故だ。居住者の3人に1人が外国人であるシンガポールでは、日本とは比べ物にならないほど外国人がたくさん運転している。例えば、バスの運転手はほとんど外国人労働者が担っ

シンガポールは国際大企業の工場を誘致して発展してきた二次産業国だ。近年は周辺新興国との差別化のため、教育や医療、金融などの三次産業への転換を図っている。そんなわけで、東南アジアの金融センターでタックスヘイブンとくれば、きっと魅力的な金融商品があるに違いない。

日本を離れて早5年。勤務先が入れてくれる基礎的な健康保険の他に、個人年金や医療保険について加入を真剣に検討することにした。幸い、知り合いにローカル保険会社の営業マンを紹介してもらえたので、彼に会って話を聞くことにした。

家も子供も必要ないんすけど…

このローカル保険会社の営業マン君は笑顔が爽やかななかなかのイケメンなんだけど、中身が典型的シンガポール男子で微笑ましい。共通の友人経由でずっと前からお互い存在を知ってる仲なので、今更な自己紹介などはすっ飛ばして本題に入った。

最初に僕の1ヶ月の収入と支出を検証して、どれだけ投資にまわせる余剰資金があるのか計算する。収入も低いけど支出も低い、僕のお財布事情に目を丸くする営業マン君。

次に将来の支出について計算する。今の余剰資金をどのように将来に投資していけるかを検証するのだ。ここで大きなファクターとなるのが、住宅ローン・子供の教育費・親の介護費用だ。

僕の場合、定住出来ないタイプなので、どこかに家を買うつもりは毛頭ない。子供も生理的に嫌いだし、両親も経済的に僕などに頼る必要はない。そう伝えると目が点になる営業マン君。僕は引きこもって数百円の電子書籍を読むのが趣味だし、その数百円はネットで稼げる。その他にはせいぜい音響とかのガジェットにしかお金使わないのだよね。

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シンガポールの人たちは、良くも悪くも判を押したように均質な人生を歩む。学校が終わったら新卒で就職し、その過程で結婚し、家を買い、子供を育てて、定年を迎え、家族に看取られ死ぬ。

学校がポリ卒か大卒か、家が公団住宅かコンドミニアムか、終末医療を病院で受けられるか在宅か、などなど各フェーズでグレードの差こそあれ、基本的な流れは全員一緒だ。なのでシンガポールの金融商品はこういう現地の一般的人生設計に最適化しているらしい。

一方、僕が必要な金融商品はつぎの2つ。

  • 事故や大病の際の医療保険
  • 定年後もしくは障害を負ったときの個人年金

どちらも、世界のどこにいても現地通貨で受給できると良い。居住者の3人に1人が外国人なシンガポールなら、こういう特殊な保険もあるのではないかと期待した。

一生シンガポールに住まないなら良い金融商品はない

営業マン君の想定していたシンガポール的な人生プランと僕の想定がかけ離れていたため、いったん条件を持ち帰って後日オススメの金融商品についてレクチャーしてくれることになった。

その後、紹介されたのが中国の大手生保が売っている医療保険と、フランス大手の個人年金プラン。どちらもシンガポールに支社があり、現地に特化した金融商品を売っているとのこと。

結果から言うと、僕の予算で是非とも買いたい保険・年金はなかった。ネックになったは次の点。

シンガポール国外で支払いを受けにくい

もし、今後シンガポール国外に移住した場合、そこで保険サービスを受け取るのはあくまで例外的事象になるらしく、追加で病院などを介した手続きが必要になる。例えば日本の病院にお世話になったとすると、保険会社との間に翻訳業者を通す必要が出てきそうだ。

老後や病床にあるのに、こんな手続きを自分で英語でできる自信がない。結局、シンガポールに住んでいないのであれば非常に使いづらい保険ということになる。

医療・住宅が高額なシンガポールに老後住めない

だからといって老後をシンガポールで過ごすのは現実的じゃない。日本の裕福層がシンガポールに移住したというニュースを目にすることもあるけど、それはあくまでお金があるから出来ること。しかも、彼らの定着率も低く、秒速の彼とか歌手とか会長とか、すでにシンガポールを去っているという話。

今後僕がシンガポールの永住権を得てビザの問題をクリアしたとしても、住居費と医療費がべらぼうに高いこの国で勤労せずに老後を過ごすのは現実的じゃない。

為替差損が金利を凌駕する

決定的なのが、支払い通貨がシンガポール・ドルになる点。近年、シンガポール・ドルは政府の為替介入などで米ドルに対し0.7〜0.8の間で安定している。ドルペグ通貨というわけだ。

一方で、シンガポールは為替操作を禁止するTPPにも加入する方向で動いている。トランプ政権の誕生で米国が抜けてグダグダになっているTPPだけど、今後為替介入がやりにくい状況に追い込まれた時、経済規模の小さい小国の通貨がどうなるのかはリスクを含む。

なので、例えば日本で老後を過ごすことになった場合、クロス通貨である日本円との為替相場はさらに変動幅が大きくなる。個人年金は金利がついて支払額よりも多く貰えるのが魅力なのに、為替差損で金利が吹っ飛ぶ可能性を常に孕む。

まとめ

年金を信じて海外から払い続けている人もいるけど、僕は望み薄だと考えている。だからといって民間の金融商品も難ありということが明らかになった。

海外生活で頭痛の種である健康保険と老後の備え。今後も諦めずに自分にあった商品を探していきたい。オススメの金融商品がご存知の方は是非教えてください。