シンガポールに移住して良かったこと困ったこと

先月(2017年5月)、経済産業省の若手官僚が作成した資料がネットで話題になった。内容に関して賛否両論あるようだけど、僕にはとても面白い読み物だった。

日本の未来に大きな影響力を持っているにも関わらず、普段「匿名の存在」である官僚さん達の考えが、こういったカタチで国民に直接提示され議論を掻き立てるのは有意義なことだ。

この資料の5ページ目。見えない将来に不安を抱えた国民の声として「そろそろシンガポールに脱出かな」という吹き出しが目に止まった。役立たずの老人を飼うために若者が苦役を強いられる日本の、このどうしようもない閉塞感から逃れるための候補に上がるのがアジアのタックスヘイブン、シンガポールなのかもしれない。

そこで今日は、日本で人生行き詰まってシンガポールに脱出後、実際に6年暮らしてみて良かったこと、困っていることを書こうと思う。

ダラリーマン向けです

この記事は、固定概念でがんじがらめな日本の空気に疲れて、もっとユルくていい加減な人生を模索している人向け。価値観が違えばメリットもデメリットも180度変わってくる。僕の価値観の根幹をなすのは「ラクしたい」だ。たとえ得られるモノが減ったとしても、その過程で極限まで不快な体験をしたくない。

のんべんだらりんと毎日青空の下、ビール飲んで寝て暮らしたい。※気が変わって現在断酒4日目  ※その後間もなく挫折しました…

とはいえまぁ南の島の生活ってそんなもんだと思ってたんだけど、赤道直下のこの国にはなぜか限界まで頑張って出来るだけ多くを得たい人が集まってくる。カメハメハ大王の歌を知らないのだろうか。

そういう、シンガポールで頑張って成功を掴みたい人に、この記事は全く参考にならない。どうかGoogle検索にお戻りください。

移住して良かったこと

さて本題に入ろう。シンガポール移住のメリットを一言で表すならゆとりをもって働ける環境だ。「英語が通じる」「安全」「契約社会」「タックスヘイブン」みたいなありきたりなメリットも、全ては働きやすさにつながってくる。

のんびりした働き方が出来る

開発独裁と呼ばれる徹底した経済成長戦略によって、国際企業の工場や本社機能を世界中から誘致して、たった50年でここまで発展したシンガポール。林立する高層ビルが背景のマーライオンが有名なので、シンガポールでのんびり働くのは想像しにくいかもしれない。

確かに10世帯に1世帯が億万長者で、その割合は世界随一だ。でも僕からすれば、じゃあ残りの9世帯はどうなのよってわけ。実際はシンガポールにも東南アジア的なのんびりした暮らしを守っている人がたくさんいる。

日本の労働市場で「熱意ある社員」は6%しかいないらしいけど、実はシンガポールにも9%しかいない。シンガポール人も大部分は仕事にやる気なんて無いんだな。

頑張っても昇給しないなら、限界まで手抜きするのが合理的

日本に足りないのは時間と心のゆとりだと思う。長時間労働はもちろんだけど、何かにつけミスを許さない締め付けが息苦しい。

例えば、日本だと時給制のコンビニバイトでさえ「完璧な接客」を求められる。ところがシンガポールのコンビニ店員はケータイいじりながらレジカウンターで飯食ったりしてる。それでもレジ打ちに支障ないので誰も文句を言わないし、自分が働く立場になった時もそのレベルで適当にやってれば良いのだ。 清々しいことこの上ない。

もちろん、シンガポール政府が求めているのはハイスペックで高給取りの外国人だ。だけど、そこまで優秀じゃない僕のようなグダグダ人材も、こういうゆとりを持って生きている現地の人とデスクを並べて働けている。

この余裕のある労働環境に関しては、シンガポールに移住して本当に良かったと思う。 そして一緒に働いてくれるシンガポールの人たちに心の底から感謝している。

【2019年1月追記】毎年のように厳しくなる就労ビザの取得条件により、シンガポールは外国人がグダグダ働けない国になりつつある。グダグダじゃないと働けない僕自信も2018年10月でシンガポールから完全撤退済み。これからはベトナムがアツい!?今後体を張ってレポートします(=^・・^=)♬

税金が安い

シンガポールの税制に詳しい人が見たら僕が貧困層であることがバレるけど、僕が1年間にシンガポール政府に納める税金は、日本で働いていた時の1ヶ月の源泉徴収よりも安い。シンガポールの税金は信じられないくらい安いので、僕の可処分所得は移住してからの方が増えた。

ヤバくない?国に持ってかれる給料が12分の1以下だよ。税金天国・タックスヘイブンとは良く言ったもんだ。

日本で間引かれる税金や健康保険、国家的詐欺である厚生年金なんかは、後期高齢者をただ延命するために湯水の如く使われている。高齢者優遇の若者棄民政策。

日本の将来を担う子供や若者の未来をないがしろにしてまで、死を待つばかりの高齢者に血税を投入する意味がわからない。日本でいくら納税しても祖国の未来は良くならない。

それならタックスヘイブンに移住して自分で運用した方が楽して幸せになれる。

満員電車を避けられる

日本で痴漢が社会問題になっている。女性は痴漢される恐怖、男性は冤罪に巻き込まれる恐怖。ただでさえ息苦しい満員電車が、さらにギスギスしているだろうと思う。

僕は過敏性大腸症候群で長年苦しんできた。今でも満員電車はウンコ漏らす恐怖と結びついてトラウマだ。

残念ながらシンガポールにも満員電車がある。シンガポールの国土は東京23区程度の広さなのに、2017年現在鉄道が5本しかない。ほぼ同じ面積の東京23区には乗り入れる路線が62もあるのだから、それがわずが5路線に集中するシンガポールの公共交通いかにヤバいかわかると思う。

でも実際、シンガポールの満員電車は日本よりずっとマシだ。まず、シンガポールには多摩や埼玉や神奈川がないので、あくまで23区内の移動だけだ。人口も東京よりずっと少ない。 中産階級でも「中の上」は会社の福利厚生で格安でタクシー通勤できるのも大きい。

http://nameless.life/post-1336/

そんなわけで、シンガポールでは朝にちょっと時間をズラせば容易に混雑を避けられる。日本だとラッシュは朝6時から9時半ごろまで続くので、無理やり乗り込まないとホームでいくら待っても状況は改善しない。一方、シンガポールの朝のラッシュは30分早く起きるだけで座れるほどのゆとりを得られるのだ。

満員電車は人生の幸福度をガッツリ下げる社会悪。これはシンガポールに移住する大きなメリットだ。

日本の満員電車は工夫で回避できる。シェアハウスで都会に住もう。

不注意な人が多すぎて自分がADHDなことを忘れる

前述のコンビニバイトが典型的だけど、シンガポールで働く上で求められる水準は、日本のそれとは比べ物にならないくらいユルい。僕の同僚にもちょっと信じられないくらいミスを繰り返す人がいるんだけど、彼もここでは「普通」だ。

これはシンガポールの人の能力が低いというわけじゃなく、がむしゃらに出世する必要がないなら仕事ごときに注ぐモチベーションはその程度で充分なのだ。

そもそも経営者や管理職も労働者に多くを求めてないし求められない。っていうか経営者や管理職がそもそもちょっとヌケてたりする。

そんなわけで、シンガポールで働き始めてからというもの、注意力散漫な僕でも一生懸命やってれば時に仕事出来る部類になっちゃって戸惑うことすらある。いままで日本の社畜生活で負ってきたトラウマは何だったのだろう。文字通り死ぬほど苦労したので認めたくないけど、日本での苦労は無駄だったとしか思えない。

聖書によると労働とは罰。今後もそういう価値観でまったり勤労していきたい。

ADHDが仕事でミスを減らす5つのコツ

移住して困っていること

シンガポールで困ること、それはメリットの裏返しだ。

税金が安いから福祉が貧弱になり、仕事がユルいから自分が受けるサービスも悪くなる。そして東南アジアのラクな生活に慣れちゃうと、日本の張り詰めた空気がただただ苦痛で、ますます祖国に順応できない日本人になってゆく。

医療保険が無いからいざとなったら死ぬしかない

人口あたりの犯罪率で日本よりも安全な国シンガポール。移住した当初は、日常生活でまったく危険を感じないのを良いことに「年金と健保から開放されてラッキー」とか思っていた。

そんな折、中国籍の友人がジョギング中にクルマに轢かれた。彼女は長いこと死の淵を彷徨い、その後奇跡的に蘇生したものの今でも後遺症に苦しんでいる。この悲惨な事故で彼女にのしかかった医療費たるや。。。

この国最大の危険は交通事故だ。車道と歩道がほぼ完全に別れているので日本よりは安全な都市構造なのだけど、いかんせん運転が雑。なのでヒヤリハットはしょっちゅうある。

http://nameless.life/post-1701/

流石に恐ろしくなってこっちで保険を買おうと試みたんだけど、僕に丁度よいプランが見つからず未だに会社が入れてくれる簡易的な保険だけで生活している。この状態で事故や大病に見舞われると、死ぬしか無い。

シンガポールで個人年金と医療保険を買おうとした話

今思えば全ての医療が3割負担、高額な医療費には更なる補助が出る日本の皆保険制度は、世界でもまれに見る恵まれたものだった。中でもシンガポールの歯科治療は高額なので、歯間ブラシなども使って入念に歯を磨く習慣がついた。

言ってみれば頭の片隅に健康不安がこびりついていることになる。健康に気を使うようになるので良い変化なのかもしれないけど、やっぱり心配事はメンタルに良くない。

住環境がクソ

我が家のシャワールームの天井からは水が漏れている。この水は上階のトイレの汚水である。おぇーーー!大家さんは仏様のような人格者なので、もう1年以上この水漏れを止めようと業者を呼んでは修繕を繰り返している。

ところが一向に直らない。最初は天井のコンクリートの隙間に詰め物をした。すると下水パイプから漏れ始める。パイプを交換すると、隙間のパッキンから漏れ始める。まさにいたちごっこ。

我が家の場合はもう建物が古いのでしょうがない。でも、新しい物件も下水が逆流したり、窓枠が落下したり、散々なかんじ。

そしてこのグダグダクオリティのくせに家賃が高すぎる。汚水が漏れるオンボロシェアハウスなのに、我が家の家賃は東京郊外のワンルームマンションくらいする。しかもこれでも都市部では最安の部類。

住環境に関して、地味に困っているのは金持ちしかホームパーティーを開けないこと。僕のシェアハウスにはリビングがないし、HDBやコンドミニアムに間借りしてもキッチン使用禁止は当たり前で、リビングは大家さんのテリトリー。だから家に友達を呼んでまったりとタコパするには、1フラットまるごと借りるしかなく、これには月に最低20万円くらい必要だ。

シンガポール人でさえ公団住宅に入居するのに何年も待つ住宅難。カネのない外国人にあてがわれる住居のクオリティはそれはそれは酷いが、我慢するしかない。

http://nameless.life/%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E4%BD%8F%E5%AE%85%E4%BA%8B%E6%83%85/

高い、遅い、酷い

シンガポールのサービス業はなかなかひどい。しかも心なしか年々さらに劣化しているように感じる。でもこれはメリットであるユルい労働環境の裏返しなので、僕は頭ごなしに批判するつもりはない。

でも、たまには良いサービスを受けたいではないか。せめて5000円以上の食事をした時くらい…。

値段とサービスは比例するものだと思っていたのだけど、シンガポールではお金を払ったからと言って良いサービスを受けられるとは限らない。「この俺様がクソだるいのに働いてやってるんだ主義」の人はどこにでもいて、これに当たると不快感を高く買わされることになる。これは接客業の社会的地位が低いことと、低賃金の移民が担っているのが原因だと考える。

それなりにお高いレストランの味すら劣化しているようだ。これは僕の主観でしか無いけど、去年食べた時は絶対入っていたデカくてプリップリなむき海老が、今年は同じメニューの具から消えていたりする。楽しみにしてたのに。

Instagramでウケるような奇抜なカフェが雨後の筍のごとく開店するものの、カフェなのにナイトクラブのようなズンドコ節が耳をつんざき、肝心の珈琲もコピ・オ・コソンと大差なく、当然の結果として2年以内に大抵潰れる。だから老舗や名店がほとんどない。

外食産業の惨状は、ミシュラン・シンガポールで星を獲得した29店のうち8つが日系なことからもわかる。ホーカーの屋台がミシュランとか、もう失望した審査員の嫌味としか思えない。

あと、物流のクソさはホント困る。詳しくは下記の記事を読んでほしいのだけど、荷物を紛失するのはとにかくやめてほしい。

Amazonで日本の物流がパンク、その時移民国家シンガポールは…

生活がユルくなりすぎて祖国日本に帰れなくなる

多民族国家シンガポールでは「常識」があいまいだ。民族や宗教が違う人に自分の常識は通じない。だから無言の同調圧力が少なく、本当に必要なことは言葉で説得される。

さらに僕は外国人なので「みんなで団結して成し遂げよう」みたいな根性を求められない。組体操みたいな悪ノリを強いられないし、頑張ろうニッポン!絆!みたいなウザい宗教に巻き込まれることもない。これが最強に心地好い。

周囲に迷惑さえかけなければ、ぶっちゃけ迷惑なレベルで好き勝手な人もいるんだけど、何をやっても表立って咎められることは無いといっていい。素晴らしい。

多文化共生国家シンガポールで全員参加イベントは大変

などと、さも良いことのように書いてきたんだけど、こんな包容力のある社会に慣れちゃうと、たまに日本に帰国するとき本当に息苦しい。たぶん、僕がもし完全帰国するハメになったら、また日本社会に順応し直すのに相当苦労すると思う。

これは祖国との距離がどんどん開いているということ。僕は永住権を持っているわけじゃないし、そもそも経済的に老後をシンガポールで暮らすことはできない。だから日本社会に順応できなくなっていくのは困った事態だ。

実はシンガポールの若者も閉塞感を抱えている

結局、どこの国でも閉塞感の正体は「親と同じステータスを得るのが難しい」ことに尽きるのではないか。

例えば日本の場合、僕らの親世代は「良い学校→良い会社→良い人生」をコンプリートすれば「庭付き一戸建ての円満家族」というジャパニーズ・ドリームを手に入れられた。

ところが今では良い学校を出ても「人間力」が足りないと就活に失敗するし、たとえ良い会社に入っても定年まで勤められる人は少ない。さらに、人気企業の6割で国が定める過労死基準を遵守していないことが明らかになった。

良い会社も潰れるし、良い会社に自分が潰される。親世代と同じステータスをどうやって手に入れればいいのか。

5年住んで、現地の人の暮らしをよく知るにつれて、シンガポールの若者も同じような閉塞感を抱いて生きていることがわかってきた。

シンガポールの親世代は、リー・クアン・ユー元首相の慧眼による経済成長の波に50年もの間乗り続けてきた。そして好景気は不動産価格の継続的上昇を燃料にしていた。

ところが2013年をピークに、不動産価格は低迷を続けている。これを期に景気が停滞して外国人労働者の引き締めが始まり、今後新築する住宅数も減らされる計画だ。シンガポールの若者も親世代と同じステータスを得難くなっている。

残念ながら現世にユートピアは存在しないのかもしれない。

不動産が焦げ付いて結婚できないシンガポール

まとめ

いかがだったでしょうか。このブログの読者の3人に2人は日本国内に住んでらっしゃる。そして、このメンヘラじみた内容に辿り着く人は、何かしら日本で閉塞感を抱いているのではないかと思う。

女性でも安心して移住できる国としてシンガポールは現実的な選択肢だけど、日本語で語られるシンガポール情報は、どうにもオハイソ(死語)でバブリー(死語)なのが多い。駐妻のセレブ日記とかね。

そんな訳で、現実的で泥臭い情報も必要だとおもい、冴えないダラリーマンが長々7000字も書いてきた。

言いたかったことは、僕のように特に成功を追い求めていないグダグダ人材でも、シンガポール移住はメリットがあるということ。もちろん、我慢しなければいけないデメリットもあるんだけど、日本で追い詰められた僕のような人には屁でもない。

【2019年1月追記】もはやグダグダ人材がシンガポールで現地採用を狙うのは現実的でなく、東南アジアの成長国に僕自身が移住計画中な状況。

「必死な現状維持」は虚しい。日本社会にしがみつく苦労を、海外に出る前向きな努力にかえて、ラクに生きられる人が増えたらいいなと願っております。