僕がシンガポールを初めて訪れたのは2011年。中国経済の失速に足を取られるかたちで、この国の景気が停滞する寸前だった。
それ以降、就労ビザの締め付けや不動産価格の低迷でなんだかグルーミーな雰囲気になっていくんだけど、当時はまだフェラーリやマセラティが今よりビュンビュン爆走していて、奇抜なスカスカコンドが建設ラッシュ、オーチャードロードも中国人観光客で賑わっていた。
バブルを知らずに育った世代の僕は、初めて見る「好景気」ってヤツに圧倒され、シンガポールを好きになった。
経済だけじゃなく、心なしか文化も今より華やかだった気がする。
例えばこれ。
シティーホールのフーナンセンターにはメイド喫茶があった。シンガポールにも電気街があるというのでブラ歩きしていたら偶然発見したんだ。
ヤバい!萌え萌えキュン♥とか言うシンガポール女子を見たい!
さっそく入店。
なんとなく設備投資が足りない感じの店内。そしてアニソンが爆音で流れていてなんか場違いな居心地の悪さ。。。
んで、これがメニュー。
ってかお前誰だよwww
そう、かわいいコーヒーはメイド喫茶だけでなく、執事喫茶も兼ねていた。普通に考えたらありえないコンセプトに度肝を抜かれながらも、気を取り直して店内を見回すと、客は僕しかいない。
っていうかメイドと執事がアニメ見ながらキャッキャウフフしており、オタク店員の楽園と化していた。ヤバい。いろいろヤバい。
ただ、メイド姿のシンガポール女子を見られたのは収穫だったね。ヤバい!
看板メニューが必要
さて、このなんちゃってメイド喫茶はもう存在しない。それから程なくして潰れた。
シンガポールのビジネスはこのパターンがすごく多い。
本来ぜんぜん違うコンセプトをモリモリに詰め込んで、結局なんの店なのかわからなくなって潰れる。いろんなお客さんを幅広く取り込みたいのだろうけど、結局どのお客さんも満足させられず、短命に終わる。
例えば普通のカフェ。
カフェを謳っているのに、珈琲・紅茶には全然チカラを入れておらず、もっぱらレストラン化している。メニューもめっちゃたくさんあってファミレス状態なんだけど「この店に来たらとりあえずコレを食べとけ」っていう看板メニューがない。
牛丼並盛り、ミラノ風ドリア、ポン・デ・リングみたいなヤツね。
さらに店内には爆音でズンドコ節が流れ、カフェなんだか、レストランなんだか、ナイトクラブなんだか訳がわからんことになっている。
飲食意外のビジネスでも同じだ。
我が家はボロいのであっちこっちガタが来ている。大家さんが超絶いい人なので、ぶっ壊れるとすぐに業者を呼んでくれるんだけど、何がどう壊れようと、同じおっちゃんが修理に来る。
このおっちゃん、なんでも直せる凄腕の修理屋サンかと思いきや、そこら辺にいる普通のおっちゃんなんだな。これが。
果敢になんでも直そうとするけど、結局何も直せない。
上の階からトイレの汚水が漏れている件など、過去2年で何度もおっちゃんが頑張ったにも関わらず、今朝も絶賛漏れ漏れしてた。ヤバい。
継続はチカラ也
日本の就活は空前の売り手市場らしいけど、シンガポールは建国以来長らくそんな感じ。だから給料を上げるために転職を繰り返すのが王道のキャリアパスになっている。
ところが給料の額だけにこだわって、異業種をランダム・ウォークした結果、専門知識が積み上がっていない人がたくさんいる。
これはもうシンガポールの文化なのかもしれないね。
文句を言うのは簡単だけど、人の振り見て我が振り直せってヤツ。シンガポールに来てから「特化」と「継続」の重要性を強く感じる。
僕ももう33歳だし、これだ!って思うものに集中して鍛錬していこうと思う。