僕はバブルを知らない世代なので、6年前バックパッカーとしてシンガポールにやってきた時は驚いたものだ。
金曜日の夜ともなれば歴史として認知していた「ボディコン」に身を包んだ女性たちが街に溢れる。最初、夜職の女たちが街に繰り出してるんだと思ってたら、程なくして僕のツレも全体的にスゴいボリューム感で登場し、これがシンガポール女子の正装なのだと度肝を抜かれた。
それに街の至る所で工事をしている。5年後に地下鉄をあと3本通すのだとか。高層ビルの合間に更なる高層ビルが建ち、フェラーリやランボルギーニが陽のくれた街にカネが燃える音を轟かせる。
これが伝説に記されし好景気ってやつか!
低成長時代へ突入したシンガポール
ところがそれから僅か数か月で急転直下、シンガポールは低成長時代に突入した。
シンガポール経済は不動産価格の安定した上昇に支えられてきた。ところが中国の景気が一段落して、さらに外国人を減らす政策が重なり、不動産市場からチャイナマネーが引き上げた。実際、ベタ踏みフェラーリで爆走する成金を体現した中国人が目に見えて減った。
人口ボーナスの終焉だ。
日本で言えば「三丁目の夕日」の時代。安くて若い働き手がわんさかいて、福祉が必要な老人が少ないピラミッド型の人口動態では、政治家や国民の資質を問わず経済が急成長するという。昨今ではBRICs諸国がそんな感じ。
シンガポールは世界各国から若い働き手が集まってくる状態が建国以来続いてきた。自国民はとうの昔から少子高齢化社会なのだけど、引きも切らない外国人労働者がそこを埋めていたのだ。まさに集団就職列車が次々と上野に到着する「三丁目の夕日」。
ところがチャイナマネーが引き上げて不動産価格が下落。シンガポールは守りに入ってしまった。自国民の職を確保するために専門職外国人を追い返し、建設業の肉体労働者も需要が減り数を絞られた。
そんな「新住民」の流出に加え、建国当初からの「旧住民」が介護年齢に達し、追い打ちとなっている。
先細りで夢のない労働環境と、高額な福祉。老後の心配を人質に取られ、定年まで嫌々働く。
シンガポールは僕がよく知る「没落先進国」に急速に近づいている。
街と共に成長していきたい
生来不景気しか知らない僕にとって、バブルとその終焉を体験できたのは貴重だった。
具体的には「未来はもっと豊かになる」と信じるメンタリティ。
来年も昇給するんだからちょっと背伸びして良いものを選ぶ。欲しいものはローンを組んでも買う。中古物件を売れば新築が手に入る。子供が出来ても学校に上がるころには昇給しているから学費も大丈夫。老後にはまとまった貯金が出来るから安心だ。
余裕のある経済は、自信を生む。
最近はバンコクやホーチミンの求人情報に目を通すのが日課。景気が悪い場所にしがみつくよりも、近隣新興国のエネルギーに乗って自分も成長出来れば最高だ。
来年も自信を持って楽しく生きたい。