ここ最近シンガポールはやけに涼しくて、寒がっている人もいるけど僕には快適な温度。北緯1度とはいえちゃんと北半球の国なんだな。
そんな日本の春を思い出すような夕暮れに、シンガポール女子とぶらり飯を食いに出かけた。
世界一の人口密度を誇るシンガポールの街には、いつでもどこでも人がいる。視界に常に人間が映るので普段は鬱陶しいんだけど、南国の夕日を背景に家路を急ぐ漆黒の人影は美しい。この時間はシンガポールの忙しない街並みを好きになる。
そんな薄闇の高層アパートHDBの一角に、水銀灯で煌々と照らされた場所があった。なんだろう?
「バトミントンじゃない?」
一見殺風景に見えるHDB群だけど、あちらこちらに子供の遊具や簡易なエクササイズマシンが設置してある。よく見るとバトミントン場やバスケットゴールがあるHDBもあって、日が落ちて涼しくなると地域の人が道具を持ち寄ってアフター5を楽しんでいる。
この日は高校生くらいの女の子たちがバトミントンに興じていた。ちゃんとした照明設備が完備されているのがシンガポールっぽい。
「アタシも子供のころバトミントンやったなぁ」
彼女は本当は水泳をやりたかったんだけど親に禁止されてしまったと言う。それで近所で出来て親の目の届くバトミントンになったらしい。子供がせっかくスポーツに興味を持ったのに、それを禁止する親心とはいったい?
「溺れたり他の子に怪我させたら大変だからよ」
あぁ、似たようなこと言ってるシンガポール男子を知っているよ。
スポーツで加害者になるリスク
近所の素行不良インド人を討伐するため、僕はボクシングを練習できるジムを探していた。それで良いジムが見つかったら一緒に通おうとシンガポール男子を誘ったんだけど、断られてしまった。
「ボクシングは母ちゃんが良い顔しないだろうし」
僕より若いとはいえ彼はもう20代後半だ。いくら実家暮らしでも母ちゃんなんて捻じ伏せるか適当に放っとけや。
「でも母ちゃんが言うこともわかるんだ。保険がないから怪我したり、相手に怪我させるようなことは出来ない」
なるほど…。
別のシンガポール友人が雪を見に日本に旅行に行くというので、スキーを体験してみればと勧めたんだけど、同じ理由で断られたこともある。
「スキーとスノボがぶつかって死亡事故が起きたニュースを読んだ」
自分の怪我なら海外旅行保険が助けてくれるだろう。でも異国で事故の加害者になってしまった場合、裁判費用やその間の滞在費まで保険がカバーするかわからない。
そのリスクを取ってまでスキーをしてみたいとは思わない。
これらの出来事で、シンガポール人にとって怪我をすることや加害者になることは大きな恐怖なのだと思い知らされた。そうしたリスクが新しいスポーツに挑戦しようという意欲を邪魔していることも…。
真剣に保険を探そう
日本には国民皆保険があるから怪我や加害者になるリスクをあまり心配せずスポーツに挑戦できるんだ。
スポーツで怪我をしたり、事故で怪我をさせてしまっても、自分も相手も健保で病院に通うことができる。
相手にも保険があると安心できる皆保険は素晴らしいな。
さらに気軽に加入できるスポーツ保険もあるし、スクールに通えば運営者が保険に入っているかもしれない。
シンガポール人が心配する「もしものリスク」だけど、マルっと全て無保険である僕にも降りかかる。
テニスの流れ弾で誰かに怪我をさせたり、疲れからか不幸にも黒塗りの高級車に衝突してしまった場合、僕の人生は終わる。訴訟社会のシンガポールにおいて、示談の条件もクソもない。
スポーツ事故を心配するシンガポール人のお陰で、僕がシンガポールでかなりリスクの高い日々を送っていることを自覚した。一度挫折した保険探しだけど、この週末こそは真剣に再開しよう。