中学3年生の2学期で、高校進学の運命が決まる。内申点という、無能教師が荒ぶる生徒を無力化するための現代の奴隷制度だ。
僕の体育の成績は5段階で「4」だった。
悪くない。
僕は走るのと泳ぐのだけは速くて、学年で1番だったこともある。テニスも筋トレも楽しいし、33歳の今でも心肺能力は低くないと思っている。
ただし、僕はある特定の動きが極端に出来ない。
例えばリズムや音楽に合わせて身体を動かすダンス。チームの動きを見て自分の行動を判断する団体競技。全身を同時に動かす必要があるマット運動や体操。
こんな風に、何かの状態を判断して自分の行動に反映させるのが絶望的に苦手。これを「協調運動」と呼ぶらしい。
そんな、ただ走るのと泳ぐのが速いだけの僕にとって、中学3年生の2学期で内申点が決まるのは天の恵みだった。なぜなら夏のプールと秋のマラソン大会の成績が、まとめて2学期に付くのだ。これに加えて過集中丸暗記で学科試験もほぼ満点を取れば、ゼロに等しいそれ以外の実技点を埋め合わせて「4」を拝領できるというわけだ。
今日は協調運動が苦手な発達障害の僕が、当事者目線でスポーツを語る。
ダンスに恐怖心がある
前の職場に、朝礼にラジオ体操を取り入れようとかいう時代錯誤な提案をした上司がいた。とんでもない。僕はラジオ体操が苦手なんだよ。あんなの毎朝やらされたら発狂する。
まず、音と身体の動きを結びつけることが出来ない。だからラジオ体操では後ろの方に陣取って、前の人の動きを見ながら真似をするんだけど、目コピではワンテンポ遅れて目立ってしまう。
そんな感じでダンスが絶望的に下手くそ。
幼稚園のお遊戯会で、キョロキョロ周りを見るなと先生や親から散々怒られた。身体の動きを音と一緒に再現できないんだよ。あの幼稚園にはトラウマしか残っていない。上手に踊れない園児を怒鳴りつければ改善すると思ったんだろうか。無能な大人たちを今だに憎んでいる。
ダンスに対するトラウマは根深くて、ナイトクラブや盆踊りのようなイベントに恐怖を感じるようになってしまった。聴覚過敏もあるけど、このトラウマで人生の楽しいことをたくさん逃してきた。
チームプレーが絶望的
球技では特にサッカーとバスケと野球が苦手。つまり個人プレーのテニスと卓球とゴルフとパチンコ以外全部だ。
チームプレーが絶望的に下手くそなのが原因。
周りの人達の動きを見て適切な場所に移動したり、試合の流れを読んで適切な人にボールを出すことが出来ない。ワーキングメモリーが少なくて状況判断と動作の両立に戸惑ってるうちに、試合が進んで訳がわからなくなり、トンチンカンな行動をしてしまう。
あとね、ルールと点数を忘れちゃう。
例えばテニスって、試合中に覚えているべき数字がたくさんある。
まず今のスコア。2-3とかね。それとは別に1セットの中にも訳わからんカウントがあって、これが0→15→30→40と不規則に気持ち悪く繰り上がっていく。嫌がらせか。あとはサーブする側と、サーブするポジション。
これらを忘れるとやる気ないと思われるんだけど、テニスに熱中すればするほど貧しいワーキングメモリから情報が追い出されては消えていく。
そんな感じでチームプレーを乱す行動をするし、ルールを忘れ、自分のチームが勝ってるのかすらよくわかってない。
これじゃ学校でイジメられてしまう。
だからチームプレーが必要な根腐れ球技に対する僕の憎悪は凄まじい。バルス!
出来る運動を楽しもう
足や手を頻繁に壁にぶつけるし、何にもないところでコケるし、突き詰めると自分の身体がどう動いているのか把握出来てないんだろう。
音楽に合わせて腕を振るとして、その角度や速度に関するステータス情報が腕から脳に返ってこない。だから目視になる。すると動きがギコチなくなる。
でもね。
協調運動が出来ないからといって、スポーツ全てを否定するのは面白くない。
個人技であるスキーやスノボ、スキューバ・ダイビングなら普通に出来るし、苦手な球技だって頑張って練習したらテニスが楽しく出来るようになった。
運動に対するトラウマやコンプレックスは疼くけど、こういう楽しみや喜びをこれ以上取りこぼさないように生きたい。