観光地には外国人が好き勝手やり過ぎないようなガイドラインが必要

外国人観光客の中には素行の悪い連中が一定数混じっている。だから観光立国を目指すなら、この玉石混淆の集団をどう扱うかが鍵となる。そこでシンガポールの場合はテーマパークや遊園地に観光客を押し込めて、住宅地に暮らす一般民衆に危害が及ぶことを防いでいる。

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ところがその政策の真逆を行くのが僕が今いるベトナムはホーチミン市。

ホーチミンことサイゴンにもベトナム戦争の遺構など見所があるっちゃある。だけど旅行会社の前でポスターとにらめっこしても、どうしても左手に持った缶ビールを置いてツアーバスに飛び乗る気にならない。

なんかいまいちパッとしないんだよね。

タイの寝ブッダとかカンボジアのアンコールワットみたく、コレってそういえば教科書で見たヤツじゃん?せっかくだし行ってみるか!みたいな気分が湧いてこない。

それで結局ツアー会社の隣にある幻の遺跡「サークルK」に入って冷たいビールを買い増す。するとコンビニを出た向かいにちょうどいい感じの広場が。バイクに轢かれないように気をつけながら道を渡り、古びたベンチにドカっと腰を下ろす。

広場の前の歩道ではオバちゃんが地べたに野菜を広げる。その隣ではおっちゃんがまだ生きてるエビを素手で鷲掴みにして量り売りしている。正月明けとは言え今日は平日だ。でももう日が高いのに地元の人たちが次々と買いに来る。

いや、よく見ると本当に買い物に来たのかも謎だ。僕が道を渡ってきたときにすでにいたお客さんが、ビールを2本飲み干してもまだいる。昔なじみが井戸端会議をしに集まってきたのかもしれない。

新鮮な野菜を南国の太陽が照らし、その彩りに目が喜んでいる。

楽しい。

すると隣のベンチに腰かけていた痩せぎすの青年が声をかけて来た。僕の余っているビールを指差して恵んでくれと言う。酒税が高い日本やシンガポールなら手持ちのビールは「資産」だ。施しなど論外。断固拒否だ。

でもこの街では1缶わずか75円。

彼の地元にお邪魔する見物料として、それぐらい貢献しないのはバチが当たりそうな気さえする。僕は1本を自分用に確保して、残りをビニール袋ごと彼に渡した。

笑顔で受け取る彼。

言葉がさっぱりわからないけれど、身振り手振りからおそらく「〇〇ぶりのビールだよ」と言いながら彼は美味そうに飲み始めた。



観光で潤うサイゴンの街

ホーチミン市ことサイゴンには大規模な観光施設がない。日本で言えばディズニーランドや大阪城、シンガポールで言えばユニバーサルスタジオやナイトサファリみたいなやつね。

でも大きな投資をしていないにもかかわらず、サイゴンにはたくさんの外国人観光客がやってくる。

この街の観光資源は、地元の人たちの暮らしそのものだ。

特に今回僕が投宿しているのは、第1区と呼ばれる外国人が多いエリア。路上駐車の原チャリとゴミが散乱する歩きにくい歩道には、明らかに外国人とおぼしき人たちがラフな格好で闊歩している。

東南アジアや東アジア風の顔が多いシンガポールに比べると、ヨーロッパ系の英語が微妙な白人が多いのがベトナムの特徴と言える。長いことフランスの植民地だった影響だろうか。

レストランや飲み屋を始め、路地の屋台料理屋まで観光客を当て込んだ店がたくさんある。この街が凄いのは外国人に媚びへつらって伝統的なベトナムの味を崩さないところ。だから結構いい値段するオシャレなBarや料理屋に入っても、地元の人と思しきベトナム語が聞こえてくる。

観光で入ってくる外貨に依存するだけでなく、確実に現地社会に中流階級が育っている。



地元の迷惑に加担してた

雑多な外国人観光客を無防備な生活圏に受け入れる街、サイゴン。

ところがやっぱり地元社会との摩擦は避けられないようだ。

僕がこの街に着いた日、ベトナム人同僚に紹介してもらった地元女子と食事をした。おっとりした感じのアニメが好きなオタク女子。彼女との会話は基本英語なんだけど、日本語検定の有段者でありアニメのストーリーぐらいなら日本語で追えると言う。だから語学の教科書でよくあるパターンで、日本語で自己紹介してみた。

「ししもんです。シンガポールから来たバックパッカーです」

瞬間流れる不穏な会話の空白。なになに、僕何か悪いこと言った?ベトナム語で「ししもん」は何かの隠語だったり?

出だしから英語に切り替わり彼女が説明するところによると、この地で粗相するバックパッカーが後を立たず、地元には旅人を快く思ってない人が多い。だからこれから1週間ここで過ごすなら「シンガポールから来たエンジニア」とか自己紹介した方が印象が良くなる。そんなアドバイスだった。

これを言おうかどうしようか3秒ほど迷ったらしい。やっぱりこの人はおっとりしている。

確かにな。

今日の僕の行動振り返っても、古い街にズカズカ振り込んで写真を撮りまくった。人間の顔が映らないように心がけてはいたものの、古い建物はそのまま今でも人々の住居として使われている。自分の家を外国人にバシャバシャ写真に撮られて嬉しいと思う人はいないだろう。

しかも左手には缶ビール。朝から赤ら顔の酔っ払いが街をうろつき、断りなしに地域の街や人にカメラを向けたら迷惑以外あり得ない。

僕も迷惑な外国人観光客として、はからずも地元との摩擦に加担していた。

それで彼女からアドバイスをもらってからは街にあからさまにカメラ向けるのをやめ、路地から人がいなくなるのを待ってカメラを取り出すようになった。そのうちそれも失礼に思えて高層ビルとか当たり障りない風景しか撮れなくなっちゃった。道端の野良様達とかね。

それでも撮るんかい(=^・・^#=)

そりゃそうよ。僕は街並みの風景を撮りにやって来た。写真とビールが醍醐味なのに、これを自主規制したら呑んだくれるしかなくなる。

ユルいルールが必要では

サイゴンの街は商業的に観光地化されておらず、地元の暮らしに触れることが出来るのが魅力だ。でもいくら地元経済に必要とはいえ、僕の行動で人々の暮らしが脅かされているなら心地良く過ごせない。

この街には外国人観光客向けのガイドラインのようなものが必要なのではないか。

あまりにも外国人が好き勝手やりすぎているし、直接観光業に携わっていない人には迷惑でしかない。かといって法律でがんじがらめにすると、この心地よいユルさが失われてしまう。

だから地元の人たちの不満を吸い上げて、旅行者が守るべきマナーとして空港などで啓発するのはどうだろう。

今日で滞在5日目だけれど、地元住民の不満が爆発してユルく平和なサイゴンが失われてしまうのだけは避けたいと思った。