労働意欲が低い社会のバッファを潰すと国が突然死する

有名なミツバチのお話。

蜜を求めて花から花へと飛び回る働き蜂たち。みんなで一致団結して一生懸命労働に勤しんでるんだろうと思いきや、実はそうではないという。

全体の働き蜂のうち、ワーカホリックに勤勉な蜂は2割だけ。意外なことに、ほとんど働かないサボり蜂が約2割もいる。

じゃあ残りの6割はというと、働きつつサボりつつという正にダラリーマン蜂なんだって。蜂の世界にも僕みたいなスーダラ野郎がいると思うと親近感を覚えるね。

あ、働き蜂はみんな雌か(=^・・^;=)

しかも興味深いことに、働き者の2割だけを抜き出してエリート巣を作らせると、その中からもサボる奴が現れて最終的には2:6:2で落ち着くという。同様にサボり組だけを集めても、重い腰上げる奴が現れてやっぱり2:6:2へと回帰していく。

この2:6:2という割合は僕の記憶に深く刻まれた。このバランスには数万年の進化の歴史に裏付けられた、何か重要な意味があるのだろう。



バイタクの運ちゃん

先月は1週間の休暇をとって、ベトナムのホーチミンことサイゴンで呑んだくれた。全くそんなつもりじゃなかったんだけど、偶然にもサイゴンでミツバチの答えが見つかった。

それは文字通り道端に落ちていた。

現在サイゴンの街では地下鉄の建設が急ピッチで進められている。どうやら日本の経済協力でゼネコンが絡んでいるらしく、日の丸がそこら中にはためいていた。白地に赤の日の丸と、赤地に黄のベトナム国旗が一緒に並んでいる光景は、どことなく船の信号旗のようで趣がある。

そんなわけで現状のサイゴンには路線バスしか公共交通機関がない。

この路線バスは土地勘のない旅行者には非常に使いにくいシロモノで、移動ではもっぱらバイクタクシーを利用した。タクシー配車サービスのバイク版、Grabバイクというアプリが流行っているものの、やっぱり昔ながらのバイタクに交渉して乗るのがバックパッカーっぽくて味があるってもの。

サイゴンで外国人旅行者が多い第1区。路肩に125CCほどのスクーターが並び、その上で器用にオッサンが昼寝している。シートに後ろ向きに座り、スピードメーターの辺りを枕にするのだ。中には本当の枕完備で本格的に寝てる人もいる。

僕は不眠症なので路肩の木陰で寝られるのは羨ましいし、安眠の邪魔をしてはいけないような気もする。でもこのおっさん達こそ、客待ちしているバイタクの運ちゃんなのである。

商売っ気無さすぎだろう…。

などと侮ってはいけない。ツンツンして起こして行き先と希望の値段を伝えると、一気に本性を現す。

「旧正月に家の野暮用を放って仕事してんだ。色つけてくれや」

煮てまうぞオッサン(=^・・^#=) 今まで日陰で寝てただろうが(=^・・^#=)

とは言え予想通り。予め相場より安い額を提示してある。最終的に言い値から50円くらい上乗せした額で合意した。



2割のサボり蜂は社会のバッファ

世界屈指の少子高齢化社会である日本。

でも足を引張っているのは東京などの大都市で、地方では徐々に盛り返しつつある。少子化の原因として喧伝される出逢いの無さや所得の低さ。でも現実は出逢いが少なく平均所得も低い地方の方が出生率が高い。

非婚化・少子化の真の原因は結婚・家族が不効率でダルいからだ
小学生のときから「ではペアを作って練習しましょう」みたいなノリが嫌いだった。 僕は大概のことにやる気がないから、相手のノリに合わせてや...

この原因はジジババ世代の子育て参加にあると僕は思う。

待機児童が問題になる都市部に比べて、地方では子育てで同居や近隣の親族を頼りやすい。もちろん親戚付き合いはダルそうだけど、子供が熱を出した時などに気軽に頼れる存在は心強いに違いない。

フルタイムで働いていない人がチラホラいる社会は不測の事態に強い。

普段は積極的に社会参加していないようでも、そういう人材は突発的に助けが必要な時のバッファとして機能している。物価が高く地方から出てきた単身者が多い大都市では、このようなバッファを確保し難い。だから不測の事態に陥るリスクを徹底的に回避するのが合理的になってしまう。

これが都市部の少子高齢化の原因だと僕は確信している。

この社会のバッファは日本でも昔から機能してきた。

例えば太平洋戦争で男が根こそぎ徴兵された時、東京の電車やバスは女性が運転していたという。自ら陸軍に志願してフィリピンで終戦を迎えたウチのばぁちゃんが言うんだから間違いない。もし彼女らがフルタイムで働いていたら、戦争で都市の交通網が破綻していただろう。戦争が早く終わったという意味ではそっちの方が良かったのかもしれないけどね。

この様にバッファが多い社会は不測の事態に強い。フルタイムで働いていない人材は社会の「溜め」だ。

ベトナムの路肩で昼寝するオッサンたちも、まさに社会の溜めなのだろう。食うに困らない程度にダラダラ仕事しつつ、いざ男手が必要な時には頼れる人材。

ミツバチの社会は太古の昔からこの仕組みを遺伝子に刻んできた。熊のプーさんに巣が襲われたとき、病気が蔓延した時。そんな時に備えて待機している溜めがないと、日常がほんの少し崩れただけで全滅してしまう。

ミツバチに習えば昼寝が本業のバイタクの運ちゃんが2割ほどいる社会が最も安定するっぽい。

働きたくない人を労働に駆り立てる愚

ところが人手不足が社会問題になっている日本社会は、このバッファを潰していく破滅の道を突き進む。ニートが社会に馴染む様に矯正したり、産後の女性が即座に働かないと肩身が狭くなるようなイメージを流布したり。

一億総活躍など愚の骨頂。

全員が必死になって働く「溜め」がない社会は、ちょっとした変化で立ち行かなくなり突然死する。全滅を防ぐ貴重なバッファである働く意欲が弱い人間を、社会的に圧力をかけ労働に駆り立てるなど破滅を呼ぶ愚行でしか無い。

というわけでミツバチの謎を拾ったベトナム旅行以来、僕の労働意欲は輪をかけて枯渇している。そろそろ6割のダラリーマン枠から、2割のサボり蜂に栄転したいものだ。