そのまま英語に翻訳できない日本語はたくさんある。
僕が海外の外資企業で働くようになって困ったのは「お疲れ様でした」ってやつ。
超絶ホワイト企業なので僕の職場はほとんどの人が定時ピッタリに帰れる。でも例外は管理職の方々で、米国時間に合わせて電話会議に出たり翌朝のプレゼン資料を作ったりと、ヒラリーマンの僕とは比べ物にならないほど忙しそうだ。
そんなわけで遅くまで仕事する上司を横目に、ヒラの僕が先に帰ることになる。転職したてで日本人の社畜マインドが抜けてない頃は「お疲れ様です。お先に失礼します」を言わずに帰るのが落ち着かなかった。
ところがピッタリの英語表現が見つからない。
同僚の多くは何も声をかけずに仕事が終わり次第フラリと勝手に帰る。たまーに「See you 〇〇!」とフランクに声をかけていく人もいて、これが英語文化的には正解と思われる。
でも…元社畜としては頑張る上司に一言「お疲れ様です」と言いたい。なんと言っても人生史上圧倒的にラクに働ける上司なのだ。
そこで。
中華系の上司だけに中国語でそれっぽい表現を使ってみることにした。
「辛苦您了!」
一瞬「?」となりながらも「じゃあな!」みたいな返事が返ってきた。よし、気持ちは伝わったっぽいぞ。国籍は違えど中華系が多い職場だから、これからは同僚にも「お疲れ様」は中国語で言っていこう。
ところが。
「辛苦您了」は上司が部下に仕事を任せた時にその労をねぎらう言葉であり、そのまま「お疲れ様」という意味ではなかった。
中国人の同僚がこっそり教えてくれた。
おーまいごっど(=^・・^;=)
結果には予算が必要
「頑張れ!」ってヤツも英語に出来ない日本語だ。
そこでこれも「加油!」っていうそれっぽい中国語を代わりに乱用していた。でもこの頃になると職場での中国語表現を聞き慣れてきて「加油!」がイマイチ適切な表現でないことは感じるようになった。
これを確信したのが例の最高上司から直接仕事を頼まれた時。
「この仕事を頼む。求めるアウトプットはこんな感じ。必要な予算はこれを使ってくれ。なんか困ったら相談して」
ファーーーwww 予算www
これは外資企業に転職して最大のカルチャーショックだった。
日本だと「これよろしく。頑張れ」で終わるところで、必ず必要な費用の話になる。そうだよね…ちゃんとした成果を出すには予算が要るよね。なんで僕はこんな当たり前のことに驚いているんだ。
だから仕事について「加油!」っていうのは良くない。
成果を出すのに必要なのは頑張りでも気合いでもなく、具体的な道筋と充分な予算なのだ。個人に無理させるのは持続可能でないし、そもそも効率が悪い。
日本企業で働いていた時は現場にこんな不効率が蔓延していた。
例えば。起動して15分待たないと安定して使えないようなパソコンを開発に使っていた。大したことないコンパイルに30分もかかり、その度にタバコ部屋へ駄弁りに行くメンバー。挙げ句の残業。
毎日どれだけ作業効率が落ちていたことか。
この原因は、新しいプロジェクトなのに立ち上げ予算がつかないからだ。立ち上け予算がないから、そこら辺に転がっている5年前に廃棄すべきPCをかき集めて環境を整えるしかない。
ま、日本企業で立ち上げ予算がついても「キックオフ」とかいう100害あって無意味な飲み会に使われるわけだがね(=^・・^;=)
投げやり表現を駆逐しろ
現場に無理をさせて仕事をした気になっている無能な管理職は、仕事に予算を付けないし道筋や方針も決められない。
現場も現場でタバコ部屋で時間を潰し、効率が悪いから仕事が進まず深夜まで残業。結果、寝不足で午前中は仕事にならない悪循環。
よろしくお願いします=オレは何もしない
期待している=オレは何もしない
頑張れよ=オレは何もしない
応援しているぜ=オレは何もしない
「お疲れ様」に至っては、そもそも意味がない。声をかけるべきだけど何を言うべきか考えるのさえ面倒くさい時、とりあえず言っとく言葉。
英語環境で働くようになって、こういう言葉があるから投げやりが成り立つんだと確信した。
職場から投げやり表現を駆逐するべきだ。
具体的な道筋と充分な予算で効率を追求することでしか、いまの世界で戦えない。部下を鼓舞するだけの管理職と、予算も権限もない現場のヤニーズシニア達では、中国はもちろんアジアの新興国に絶対に勝てない。