妄想族の僕がシンガポールのヤクザ組織に追われる妄想をした

糖質制限の禁を破ってラーメンを食べようと、いつもと違う駅で電車を降りた。

シンガポールの鉄道は全ての駅にホームドアが完備されている。このドアには政府系の啓発広告が張られることが多く、この日も「闇金融に手を出すな」という趣旨のポスターが目についた。

日本だとなんでもアニメキャラにしちゃうけど、シンガポールの政府広告はドラマ仕立てのグラフィックを使うので毎度目を引かれるんだよね。

「Ah Longに近づくな。さもなくば人生の地獄をみるぞ」

なかなか衝撃的なキャッチフレーズと共に、胸ぐらを掴まれ脅される男性と怯える少女が写っている。

Ah Longというのはマレーシアとシンガポールで暗躍するヤクザ組織のことだ。主にギャンブル依存症患者につけ込んで法外な金利を取り立てる、ヤミ金融を生業にしている。

しっかしこの広告に協賛しているのが宝くじ協会ってのはエグいよなぁ…。

まぁそんなことはどうでもいいとして(=^・・^;=)

Ah Longは督促に応じない債務者にローンシャークと呼ばれる違法の「取り立て屋」を差し向ける。ローンシャークは債務者の家に押しかけ「O$P$」という特徴的な文字とともに黒や赤のペンキで玄関先をめちゃくちゃにする。

この「O$P$」はOwe Money Pay Moneyと読み、要は「借りたら返せ」ってわけだ。まぁ落書きだけならまだしも債務者を暴行して家に放火する悪質な取り立ても横行している。

シンガポール人の友だちとローンシャークが話題になると、子供の頃近所に取り立てが来て、チンピラの怒声に聞き耳を立てたという武勇伝を語ってくれたり。

安全なシンガポールでこんな事件が起こるのは信じたくないけど、定期的に逮捕者が出る以上残念ながらこの国にも暴力があるようだ。

ローンシャークに追われたら

ズルく、賢く、たくましく。

うつ病以降の僕はこれをモットーに生きているから、問題が起こったらたとえ自分に非があってもバックレる方向で対処する。僕が借金の返済に困り、ローンシャークのチンピラを差し向けられたら…。

逃げる一択だ。

妄想が膨らむ。まさにリアル鬼ごっこじゃん。

連日しつこかった取り立ての電話がピタッと止んだ。ローンシャークが押しかけてくる予兆だ。財布とパスポートをポケットにねじ込んで、高層アパートの非常階段を一気に駆け下りる。あえてエレベータは使わない。

セーフ。

黒塗りのセダンがちょうど家の前に止まり、チンピラがエレベータを待っているところだ。高層アパートのエレベータが遅くて助かった。

脅迫担当が2人に、運転手が1人クルマで待機している。警察を呼ばれたときの保険なのだろう。

若い。まだ10代だろう。ヤミ金組織はそこら辺のヤンキーに小遣い渡して捨て駒にするのか。

彼らが乗りこんだエレベータのカゴが上がっていく。もう1呼吸待ってからセダンの運転手の死角をついて飛び出した。大通りまでダッシュ。

タクシーを捕まえて国境まで行くよう伝える。

長蛇の列が予想されるWoodlandsリンクは使わない。高速道路PIEを使えばここからセカンドリンクまで15分で行ける。この時間ならほとんど待たずに出国できるだろう。

家を飛び出してから35分で国境を越えマレーシア側に入った。この速さならシンガポール側から追っ手が付くことは考えにくい。

ここからマレーシアのタクシーに乗り換えるが、ここはAh Longのお膝元。今後気をつけるべきはマレーシア側の人間になる。今はまだシンガポール側を探しているかも知れないけど、明日には空港にも張り込まれる。KLIAは避けるべきだ。

タクシーに告げる行き先はマレー鉄道駅。しかもジョホール・バル中央駅から1駅離れた場所を指定する。

明日中には陸路でタイに抜けて、バンコクでしばらく潜伏しよう…。

妄想族

はっ(=^・・^=)!

なんだここは。

いつもと違う駅じゃないか。そうだ、ラーメンを食べに電車を降りたんだったわ。

僕は妄想族なのでいったん妄想の世界に入ると我を忘れてしまう。長距離の運転とか止めた方がいいタイプの人間だ。

小学生の時などハッと気付いたら教室に独りぼっちだったこと数知れず。

ふと気付くと教室に誰もいなくなっている現象に名前が必要だ

いつの間にか授業が終わり、クラスメイトはみんな音楽室へ移動しちゃったのだ。誰も声をかけてくれなかったんだな…。今思い出すとあいつらムカつくわ…。

でもこうして妄想だけで1記事書けちゃったわけで、妄想癖も使い方次第だ。いつか10年越しの長編妄想をSF小説にしたいと「妄想」している。