生活費が高い都市のランキングが毎年話題になる。
その上位にはシンガポールと東京も必ずランクインしていて、どちらにも住んだことがある僕に実際どっちが高いのか尋ねる人が多い。
僕の答えは単純で「人による」だ。
この手のランキングは「外国人駐在員」の生活費を基準に算定されている。だから控えめな庶民たる僕の物価感覚とは違うし、そもそも駐在員という特殊な存在の生活費で都市の物価を測れるのか疑問だ。
例えば東京の場合。欧米系企業の駐在員が多く住む港区や渋谷区のサービスアパートメントの家賃は、狭い物件でも30万円はする。サービスアパートメントというのは水周りを含む室内の清掃やコンシェルジュサービスまで付いた生活フルサポートの賃貸だ。
ぶっちゃけ海外経験のない日本人はサービスアパートメントなんて存在すら知らない人が多いだろう。そんな特殊な場所で暮らす外国人の使うおカネで、東京の物価を測れるはずがない。
それはシンガポールとて同じ。
シンガポールは物価が高い高いと喧伝されるけど、地元のシンガポール人たちに言わせれば「そんな事無い、東京のほうが高い!」となる。
東京の方が高いかは別にして、シンガポールの物価はそれほど高くない。むしろ「安全」が無料で手に入る国なので、適当なところに住んでも強盗にあったりしない。水道水が飲めるし、安い屋台料理を食べてもお腹を壊さない。
シンガポールの物価についても地元に馴染めない外国人の視点で語られることが多く、実体をぜんぜん反映していない。
そんなわけで今日は、東京とシンガポールで安く暮らすことについて書く。
本当は安い東京
東京で高いのはなんと言っても交通費。
たまに帰国して1日動き回ると朝Suicaにぶっこんだ5000円が綺麗さっぱり無くなる。5000円といえばシンガポールでは1ヶ月分の通勤費だ。
ところが、働いているなら定期券代を会社が出してくれる。ま、その分給料が下がっているんだけどね…。とは言え都心までの定期券さえ手に入れば、さほど交通費に悩まないのが東京だ。
郊外に住んでもクルマが破格に安いから大丈夫。中古の軽自動車なら1ヶ月分の給料で買えてしまう。800万円のHondaシビックを10年ローンで買うシンガポールからするとぶっ壊れた値段だ。
それに外食が狂ったように安い。
牛丼はもちろん、ちゃんとした定食屋でも600円くらいで健康的な食事が出来る。しかも美味い。自炊するにしてもスーパーでおつとめ品が手に入るし、豆腐や納豆、卵、もやしのローテーションに乾燥ワカメの味噌汁を付ければ1食100円も可能だ。
あと東京は家賃が安い。都心に近くても古い物件であれば安い賃貸が見つかるし、シェアハウスという選択肢もある。
ただ…日本の賃貸業界は外国人に対する差別が激しく、ちゃんと働いて日本語が喋れる人であっても外国籍というだけで塩対応されるという。僕も東京でシェアハウスに住んでいたけど、そういう住宅難民の外国人が住んでいた。ここは改善すべき点だ。
それに医療の質と値段に関して日本の右に出る国はほとんど無い。強制的に医療保険に入れられるので病気になったら気軽に医者に行ける。歯科治療やクスリも3割負担だし、さらに高額医療費を助成してくれたり。
というわけで。
都心のシェアハウスに住んで長距離通勤を無くし、メシは定食屋で済ませれば東京でもかなり安く暮らせる。
参考までに5年前の僕の生活費は月に10万円くらいだった。趣味と旅行を除いた、家賃や食費なんかを合わせた額ね。
本当は安いシンガポール
シンガポールで高いのは「家」「クルマ」「教育」「医療」だ。
だから結婚して子供を持つと生活費が驚異的に跳ね上がり「シンガポールは物価が高い!」という話になる。
それこそ家賃30万円のアパートに住み、800万円のシビックを買い、子供をインターナショナルスクールに入れたら小中高までで学費が4000万円かかると言われる。日本なら私立の医学部に行ける値段だ。
「家」「クルマ」「教育」「医療」のフルコンボ。その上病気でもしたら破産間違いなし。
でも独身で衣食住にこだわりがない僕の生活費は、シンガポールでも相変わらず10万円くらい。
都会のシェアハウスに住んでメシは自炊か屋台料理。シンガポールのレストランは本当に高いんだけど、屋台料理なら500円以下で食べられる。
それにスーパーの食材は日本より安いので、自炊すればかなりお得感がある。特に鶏肉と野菜が安い。ほぼ100%輸入だけあって、旬の概念なく1年中ほとんどの野菜が食べられるのも良い。なお、アルコールとチーズが高いのはなんとかしてほしいところだ。
電車やバスで遠出しても300円を超えることはない。タクシーも初乗り300円ほどで、シンガポール島を縦断しても1500円くらいだ。
僕の仕事は私服勤務なのでスーツを買わなくていいし、常夏なので冬服もいらない。食に興味が無いので話題のレストランに行かないし、服もUNIQLOファンなので安く済む。
というわけで家のクオリティを落し、電車とバスを使って、結婚せず健康であれば、シンガポールでもかなり安く暮らせる。
シンガポール人が「東京のほうが高い!」というのも納得だ。
地元に根を下ろすと安くなる
まぁ結局、東京でもシンガポールでも、地元に馴染まないといつまで経っても「外国人用」のサービスの上で暮らすことになる。
そりゃ高くつくだろう。
シンガポールに住んでる日本人が「シンガポールは高い!」といい、東京に住んでるシンガポール人が「東京は高い!」というのはこれが原因だ。移住した国の物価が高いと思うなら、まだ街に馴染めていないからかもしれない。
僕からすると生活費を安くする工夫は海外生活の醍醐味。
不動産エージェントを通さず大家から直接家を借りたり、インド商店で安く野菜を手に入れたり、スケボーで交通費を浮かせたり。
今年はぶどうジュースからワインの自家醸造に再挑戦するつもり。1リットル3ドルのワイン!ワクワクするぜ!