たとえ幻想でもそこに行き頑張れば報われる「希望の地」が必要だ

このブログを始める2年ほど前まで「退職プータイム」という場所でお下劣なこと書いていた。どのくらいお下劣かというと、あの国の女はブスだとか、この国のメシは不味いとか、まぁそういう内容だった。

でもネガティブかつ攻撃的な情報は一定の層には確実に受容される。

だから今でもたまに「あのブログは消しちゃったの?」と言ってくれる人もいる。最近はシンガポールについて良く書きすぎじゃない?俺はもっと嫌な体験をしたし。とも。

残念ながら価値観が変化したので退プは消しちゃった。

この世に完璧な桃源郷は存在しない。もちろんシンガポールにも問題はあるし、僕が日常生活で困っていることも無いわけじゃない。でも、このブログで不満や問題を書く時は、愉快な要素を織り交ぜて毒を中和し明るい情報にするよう心がけている。

もっとも、日本語が達者なシンガポール人の感想は「ムカついた!」だったので、まだまだ毒抜きが足りていないようだが(=^・・^;=)

暗部を強調せずに明るい情報発信を心がけているのは、昔僕がその手の情報に救われたからだ。

動物園の熊

グルグル、グルグル。

僕は深夜のオフィスをだた独り、動物園のイカれた熊の如く歩き廻っていた。同じデスクの島を何度も何度もグルグル、グルグル。

今日の夜勤はイカれた僕によるワンオペ。

休職する2ヶ月前だった。

この頃にはウツが悪化してマトモに考えるチカラが殆ど残っていなかった。夜が明ける前に仕上げるべき仕事があるのに手が付かないし、そもそも作業内容を理解すらしていない。

仕事に取り掛からねばという焦りが湧いたかと思うと、次の瞬間には鉛のように鈍重な意識の沼に沈んでいき手を動かすに至らない。それを何度か繰り返した末、居ても立っても居られなくなり動物園のクマごっこを始めたんだ。

それに夜勤がしばらく続いたため、最近仕事の人間としか顔を合わせていない。昼間は不眠症なりに寝ようと努力しているし、休日はそれこそ生きるために寝ているからだ。

オフィスの窓の外は墨を流したように真っ黒。

ここはウツ都市として有名な最果ての地、茨城県つくば市。学園都市とは名ばかりの学園「集落」で、夜になるとこの陰鬱な寒村は漆黒の闇に包まれる。

このまま夜明けまで、刺すような蛍光灯と飲み込まれるような闇のコントラストに耐えられそうにない。人の温もりってヤツが必要だ。

昨晩もそう感じたので、今夜は然るべき武器を携えてきた。

ラジオ。

とりあえず温かみのある人間の存在を感じたい。

テレビと違い深夜も番組が豊富なのがラジオの良いところ。芸人っぽい下品な笑い声をすっ飛ばし、垂れ流しのオーケーストラもパス。FMのレンジが振り切れたのでAMに切り替えた。

すると落ち着いた印象の女性の声が耳に留まった。

「働くこと」をテーマにリスナーのお便りを紹介しているらしい。折しもリーマンショックの年であり、派遣切りや年越し村が社会問題になっていたのだ。

僕が聴いた最初のお便りの主は、香港でコールセンターの仕事をしているという。元々沖縄のサポート電話アウトソーシング企業で働いていたものの、待遇の悪さから転職に踏み切った。

そして流れ着いた先が香港。

日本では高給をもらえない職種でも、海外で同じ仕事をしたら給料が3倍になった。挑戦して良かった。そんなお花畑みたいなちょっと怪しい話だった。そもそも香港から日本のラジオをどうやって聴いているのか謎だしな。

とはいえ人参と里芋が名産の農業地帯で育ったからか、単身で海外に渡って働くという生き方を知ったのは僕にとってこれが初めてだった。まぁ自分は日本語しか出来ないし、何よりこんな精神状態じゃ転職どころじゃない。

でも…羨ましい。

このラジオは僕の記憶に引っかかり続けることになる。

希望の地

クレヨンしんちゃんの父ひろしも、秋田から上京して成功を掴んだ男だ。東京の商社に勤めて係長。35歳で埼玉郊外に庭付き一戸建て。

東京に行きさえすればいいとか、無論そんなに甘くない。想像を絶する苦労があったのだろう。

それでも「いつかあそこに行って挑戦してやる」という「希望の地」がなければ、産まれ落ちた場所で上手くいかない時にただ耐え忍ぶしかなくなる。昨今東京は憧れの大都会ではなくなってしまったけど、挑戦すべき「ここではないどこか」の存在はそんな時に希望の光となる。

もちろんだからと言って安易な海外渡航をそそのかしたり、リスクを隠してお花畑をでっち上げるのは良くない。

でも海外に挑戦するリスクやデメリットばかりを強調していたら八方塞がりになるじゃないか。

今いる場所で生き詰まっても人生の失敗ではない。環境を変えれば別の条件で挑戦し直す事が出来る。

そのためには「希望の地」がどこかにあるという情報が大切だ。

僕はこの場所を最低限必要な問題点は指摘しつつ、メリットやチャンスに光を当てるブログにしたい。そんな訳で「退職プータイム」の読者だった方々もよろしくお付き合いお願い申し上げる(=^・・^=)♬