うつ病休職中に海外旅行に出かけた顛末

若手社員がうつ病で休職したと思ったらSNSで海外旅行に行ってることが判明して大問題に。こんな話がTwitterで廻ってきた。

はい、ワタクシのことですね(=^・・^=)♬

何を隠そう日本で鬱になって休職しているその最中、僕はシンガポールを目指して旅に出た。

ベッドの上の生きる屍として孤独な日々を送るうち、毎晩目を閉じるたびに未来の可能性が痩せ細っていく。なにか行動をおこさなきゃ。このままじゃジリ貧だ。でも何をしたらいいのか、そもそも自分に何が出来るのかがわからない。

鬱で休職すると追い討ちをかけてくる「何かしなきゃ」という切迫感

そんな時、バックパッカーという生き物は思考停止に陥ってぶらりと旅に出てしまう。

でも結論から言うと、休職する程の精神状態で海外に出かけるのは全然オススメできない。今日は僕がうつ病休職中に海外旅行に出かけた経緯と、その顛末について書く。

何かしなきゃ

休職中に海外旅行だなんて会社にバレたらどうするんだ。

そう思うだろう。でもねバレようがバレまいが、もう精神疾患で休職した時点で出世の道は閉ざされてるんだ。実際僕は入社して3年間「普通」に働いていれば得られるハズの昇進からも外れたし。だから復職したところで新卒と大差ない地位で冷や飯食うことが確定しているわけで、あれじゃ「お利口にしなきゃ」みたいなモラルを保ちようがない。

社内の風当たりが悪くなる?そんなもん休職する前から暴風雨だったんでね、今更ちょっと田んぼの様子を見てくるくらいどうってことない。

さらに制度上は休職中にどう過ごしても良いことになっている。まぁホンネとタテマエってヤツなんだろうけど、少なくとも海外渡航を禁止するルールが存在しないことを確認した。

でもね、ぶっちゃけ倫理的にどうなのかとか会社から怒られるなんてマジでどうでもいいほどに、当時の僕は日本で生きていけない切迫感が強かった。一筋の希望の光を「ここではないどこか」で見つけないと、もうじき暗闇の中で人生を続ける意味を見失う。

その先に待っているのは…

そんな恐怖心に突き動かされ、僕は大阪から韓国系貨客船「パンスターフェリー」に乗り込んだ。

ぶっちゃけ休職中の特権を活かして平日の飛行機を掴めば船より速いし全然安い。でも国際線フェリーなら狭い座席に何時間も縛り付けられる拷問抜きに外国に行ける。

ADHDと船旅は相性がいい。

それに甲板をぶらつきながら、瀬戸内海の風情ある景色をつまみにビールを飲むのも一興。そう、飛行機と違って液体物の持ち込み制限がないのだ。しかも酔ったら3等寝台に戻って寝ればいい。脚を伸ばして寝られるなんて飛行機のファーストクラス並じゃないか。

大阪と韓国釜山を約18時間で結ぶこの船は、乗った瞬間からもうほとんど韓国だ。

追いキムチしたに違いない国民食「辛ラーメン」の鼻を突く匂いと、朝鮮訛りの強い日本語の船内アナウンス。乗客も里帰りする在日韓国人と、彼らを尋ねて大阪に来た釜山の人がほとんどを占めるようだ。

これが良い。

国際線フェリーは乗った瞬間から外国の非日常を味わえる。日本で追い詰められた僕は、釜山の裏路地に迷い込んだかのような雑多な船内で溶けるように時間を過ごした。

不眠症持ちは旅を楽しめない

シンガポールを目指すのになぜ船で韓国なのか。それはソウルインチョン空港に就航しているクアラルンプール行きエアアジアXに乗るためだ。

当時は日本に格安航空会社が参入したばかりだったんだけど、初就航したのはこともあろうに成田空港という最果ての地だった。しかも日本就航というだけで「格安」というにはまだまだ高い。ええい!千葉の奥地まで行くくらいならソウルまで行ってしまえ。

うつ病になると判断力が鈍るというが正にこういうこと。これは数々の失敗をしてきた僕の人生でも1、2を争う判断ミスだった(=^・・^;=)

誤算その1。船で全然眠れない。

ただでさえフルニトラゼパムという強い睡眠薬無しでは寝られない状態だったのに、パンスターフェリー名物洋上カラオケ大会が始まってしまった。もうこうなると全然眠れない。しかも午前2時に同室の韓国系おっさんと朝鮮系おっさんが「アツい政治談義」を始めやがり、もう船室にいる事自体がツラくなってきた。

ウルセウス!!

結局、2人のおっさん含め一睡もしないまま朝を迎えた。香港人と韓国人は世界一寝ない民族と聞いてはいたけど、まさかまったく寝ないとは。

誤算その2。飛行機で全然眠れない。

もうこうなったら釜山からギンポへの韓国国内線でひたすら寝て、体力を回復するしかない。乗ったのはこれまた当時設立したてのLCC「エアープサン」。ところが1時間弱の飛行中ずっと「えあーぷさーん♬」というテーマソングが爆音で鳴り続ける素晴らしい機内サービス。

ウルセウス!!

おかげで一睡も出来ないままギンポ空港に到着。新興LCCとして特色を出したいのは分かるけど、多分もう二度と乗らない。

それでもなんとか体力を振り絞ってインチョン空港に移動し、イミグレを通過。それで搭乗口を目指して歩き出した。でも…何かがおかしい。脳がボワンボワンする。これは…ヤバいぞ…!

広大なインチョン空港の果てしないエスカレーターの先に、エアアジアXの真っ赤な機体が見えてきた。あれがクアラルンプール行きの…

そこで僕は意識を失った。

てんかん発作が起きたのだ。極度の寝不足とストレス。僕の発作を誘発する要素が全てそろってしまった。こんな異国の、それも国際空港のド真ん中で…。いろいろやらかしてきた僕の人生だけど、この失態は5本の指に入る。

意識が戻ると野次馬に囲まれて担架に載せられるところだった。顔が濡れている。無意識に泣いていたのかと思いきや、頭が切れて顔面血まみれのようだ。ひどい頭痛はてんかん発作の後遺症のみならず、転倒したときの外傷が酷いっぽい。

あー、やっちまった。

ウツ休職中はひたすら寝るべき

唯一の救いは救命救急士のおねぇさんが超絶美女だったことだ。

インチョン空港はソウル郊外の島に位置する。そこからボッコボコの道を救急車で搬送されたんだけど、出血を拭ったり脈を測ったり甲斐甲斐しく看護してくれた。もちろんそれが仕事なんだけど、美人にあれこれされるってのは嬉しいものだ(=^・・^=)♬

しかも到着した病院で担当してくれた女医さんもこれまたヤバい美人で、しかもしかも救命救急士のおねぇさんが清楚系美人だったのに対しこの女医さんにはギャル要素がある。美形ギャルのくせに頭も良いとは!ギャル好きのししもんにとって彼女は東洋人の美を極めたような女性だった。

年収に比例して美しくなっていく韓国女性…ヤバい(=^・・^=)♬

なお今夜はこのまま女医さんと入院かと思ったら、僅か1時間で深夜の街に叩き出されたw

まぁそんなことはどうでもいいとして(=^・・^;=)

こうして結局シンガポールの地を踏むこと無く、僕の逃避行はたった2日で終わった。パスポートの出国スタンプにはデカデカとVOIDの印が重ね押しされている。

休職が必要なほどの精神状態で海外に出ると、普段と違う環境にさらされて症状が悪化する可能性がある。もちろん逆のパターンもあるけど、僕のように外国で流血事件を起こすと最悪死ぬ可能性があるし、この時も事後処理が大変だった。おカネもめっちゃかかったし…。

そんなわけで僕は倫理的問題からでなく安全面から休職中の海外渡航をオススメできない。

でも僕のようにどうしても日本でジッとしていられないなら、せめてちゃんとした海外旅行保険に加入しておくといい。なけなしの貯金で冒険するのだから楽しい思い出にしたいものだ。