ステータスにこだわってシンガポール就職すると詰むよ

3つの高層ビルの上にプールが乗っかった奇抜なホテル、マリーナ・ベイ・サンズ。それを取り囲むように林立するアジア屈指の金融街。ナイトサファリや総合リゾート島を含め、なにやら日本のメディアを通して紹介されるシンガポール像はキラキラ眩しい。

例えばシンガポールの裕福層に嫁いだ日本人女性を紹介するテレビ番組を見れば、この国で暮らしている人たちはみんな経済的にゆとりがあって羨ましいと思う人も少なくないだろう。

それに対してこのブログである。

僕は「労働はクソ」「人生がめんどい」「働いたら負け」そんなことをボヤきながら毎日酒ばかり飲んでいる。しかも実際にメンがヘラっていてエリートとは程遠い。挙句の果てに因果応報で職を失って無職になっちゃった。確かにこんな内容じゃ「あぁこんなヤツでもキラキラシンガポールで暮らせるのか」と思う人が発生してもおかしくない。

そして人が次に思うのが「なら俺でもイケる」ってヤツなんだろう。

シンガポールで働いてみたいです、僕でもシンガポールで働けますか。そんな「お問合せ」を頂くことが今年は特に多い。セントーサ島で米朝首脳会談が開催されてメディアへの露出が増えたせいかな。あとテレビでマリーナ貯水池のカワウソ親子が紹介された時にもメッセージが多かった。

ところがそんな人達に僕はほとんど「無理ですよ」と冷酷な回答を返している。

当然意地悪してるわけじゃない。客観的に見て確実に無理だからだ。

まず学歴。なぜだか知らないけど僕にメッセージをくれる人のほとんどが四年制大学を出ていない。最近のシンガポール転職戦線は東大卒の駐在員でも実務経験が足りないという理由で就労ビザを貰えないことがある。それなのにそもそビザという存在を知らず、ただ外国の「過酷な環境」とやらに耐えさえすれば世界中どこでも行けると思っていたお花畑さんも…。

次にスキル。なぜだか知らないけど僕にメッセージをくれる人のほとんどが海外就職に有利な仕事に就いていない。一般事務、専業主婦、僕が言うのもなんだけど長らく無職って人もいらっしゃった。これではビザサポートのある求人に応募するための書類を英文で揃えることさえ出来ないのでは…。

次に家族。なぜだか知らないけど僕にメッセージをくれる人は所帯持ちが多い。シンガポールは物価が高いとはいえ「家族3人なんとかやりくりしていく」と言うんだけど、そもそも月収50万円稼げる仕事にありついたとしても今では家族ビザが出るか危険なところだ。だから毎月のやりくりに頭を悩ませる程度の稼ぎの人が、シンガポールに家族を呼び寄せることは不可能だ。

これらはちょっとGoogleで調べれば、むしろこのブログの過去記事をいくつか読んでくれれば全てマルっとわかる条件なんだけどなぁ…。

それで僕はタイのバンコクやベトナムのホーチミンはどうですか?と提案してみる。僕自身も近々この辺りの都市に移住を目指しているし、ざっと調べた限りでは就労ビザ取得に必要な学歴や職歴の要件はシンガポールほど高くない。そして何より、毎年のように厳しくなる就労ビザや雇用条件を心配しながら暮らすより、たとえ給料が安くても特技を生かしてのんびり働きたいからだ。

ところがほとんどの人は「シンガポールが無理ならいいです」ってな感じにフェードアウトしていく。僕が最高に気に入っている幸福度が高い街なのに、ホーチミンやバンコクに食いついてきた人はただの1人もいない。

シンガポール在住のステータス

実情を調べてもいないのにシンガポールに異常にこだわる人は、なんだかんだ人生の一発逆転を狙っているんじゃないかと感じる。言葉は悪いけど低学歴・低スキルからの低収入。日本で八方塞がり…。そこからの一発逆転を狙うためにシンガポールのステータスにすがっているんじゃないか。

日本でウダツが上がらなかったアイツ、何かと話題のシンガポールに移住したらしい。そうなれば周りが自分を見る目も変わるというもの。

なお、それが可能な時代があった。

今年ついに足切りされた僕自身も2012年に滑り込みセーフでシンガポール就職出来たクチだ。そしてその結果まさに「日本でウダツが上がらなかったアイツ、何かと話題のシンガポールに移住したらしい」ってことで周りの見る目が変わるのも経験した。

まぁ実情はワーホリビザで時給400円のアルバイトだったんだけども…笑

その当時人気の移住先はオーストラリアがテッパンで、その結果豪政府は増えすぎた移民を抑制し始めた。それでオーストラリアで就労ビザの取得に失敗してシンガポール流れてくる日本人がたくさんいたんだ。日本帰国前の観光のつもりで1週間シンガポールに居たら、日本居酒屋で出会った人に雇われて3日後にはちゃんと就労ビザも出て働き始めたなんて人もいた。

今では考えられないユルさ。

ところが2012年以降シンガポール政府も移民を抑制し始めて、もはや背伸びしても住める国ではなくなってしまった。そしてそれ以前から住んでいる日本人も毎年バサバサ足切りされているのが現状だ。

ステータスにこだわると詰む

そんなシンガポールがユルかった時代に一緒に遊んでいた日本人は、6年経った今やもうほとんど残っていない。もちろん年々厳しくなる就労条件に足切りされた人もいる。だけどその多くは家庭の事情や結婚を控え、自分の意思でシンガポールを去った。彼らは決断する余地があったわけで、様々な事情はあれど概ね幸せな去り方だったと感じた。

一方、悲しい去り方だと思ったのがシンガポールのステータスにこだわった結果困窮してしまったケース。

「日本でウダツが上がらなかったアイツ、何かと話題のシンガポールに移住したらしい」

こう思われる前提になっているのはシンガポールのキラキラ感である。ところがシンガポールでキラキラ暮らすのってめっちゃカネがかかる。しがない現地採用の給料でキラキラ生活を維持するのは至難の技。体力もいる。

それで疲弊してシンガポール生活に詰み、移住前より貯金を減らして帰国する人がチラホラいるのだ。

例えばEPに異常にこだわる人。シンガポールで日本国籍者が取れる就労ビザにはEPとSpassの2種類ある。EPは専門職ビザであり取得に際して求められる給料や学歴が高い。それに対してSpassは技術職ビザとでも言おうか、給料は専門職より安いけどネイティブ日本人じゃないと務まらない仕事に対して発給される。

だからSpassよりEPで働いている人の方が一般的に給料が高くてエリートと言える。確かにそれは事実だけど、まるでSpassで働くことをこの世の恥のように思っている日本人がいる。

そういう人の中にはスキルと経験が足りないのにEPの求人ばかりに応募して玉砕。もし内定が貰えても学歴と職歴がシンガポール政府のお眼鏡にかなわずEPが発行されず内定取消しとなってしまうのだ。

次にコンドミニアムに異常にこだわる人。シンガポールにキラキラ感を出すのに大切なのがおウチである。林立する高層ビルが印象的な国だけに、日本で言えばタワマンにあたるコンドミニアムに住むことに異常に固執する人がいる。

現地採用の身の丈にあった暮らしはHDBと呼ばれるアパートの一室を借りるか、またはちょっと良い仕事にありつけたならコンドの1フロアを赤の他人とシェアすることなんだけど。どちらにせよ場合によっては大家さんと同居なことも。あれは気まずい笑

「そんなんじゃ友達を呼べないでしょ!」

それはそうだね。でもそんな理由で見栄を張り、月給の半分以上を家賃に当てていた人を知ってる。当然やりくり出来なかったのだろう、気付いたときには帰国してたけど。

次に食事に異常にこだわる人。シンガポールの食生活の基本になるのがホーカーと呼ばれる屋台料理だ。当然美味しいんだけど、400円くらいで食べられるだけあってキラキラ感は皆無。だから毎食1500円もするレストランでキラキラご飯を食べて、友達と会うときはさらに見栄を張って日本食居酒屋にいって1万円スッたり。

そもそもシンガポールの地元メシを見下してる時点で異国に馴染めるはずがない。日本食や食事の値段にこだわる人もまた1年足らずで帰国する傾向がある。

そんわけで…テレビが喧伝するキラキラシンガポールに乗じて人生一発逆転を狙うと高確率で詰む。

それでもどうしてもシンガポールがいい!という人は、とりあえず四年制大学を出て専門職で3年くらい働いてから転職活動をするのが現実的だよ。