デパス耐性が減衰していくスピードが読めない

不眠症を患うと、深く寝られないというただそれだけで日中のパフォーマンスが著しく堕ちる。脳に綿を詰められたようにボワンボワンする。それでアタマが働かず損をすること山のごとし…。客先の会議で本来の自分ならば難なく切り替えせるような場面にもかかわらず、上手いカウンターを出せずに契約を失する。相席の旧友が気の利いたことを言っているのに冷めたような相槌しか打てない…。

そういう歯がゆい体験を重ねていくと、本来持っていたハズの自信が徐々にしぼんでいく。そしてボンヤリして価値のない自我が意識の内側に形成されていくんだ。

せめてもう少し頭が働けば…。そのために昨夜もう少しでも深く寝られたなら…。

たとえ不眠症を患っても、人間にはメンツのためになんとしても寝なくてはいけない夜がある。

それは徹夜明けで迎えたハズせない仕事の直前かもしれないし、一世一代のデートの前夜かもしれない。なんにしても、自然な生理現象であるハズの眠気が地球の裏側あたりを彷徨って戻ってこない。そんな理不尽な健康状態に振り回され損をするのはもうごめんなんだよ。

そんな時、僕が頼りにしているのがデパスという向精神薬、精神安定剤である。

デパスを服用するとあら不思議。ものの15分で無意識に緊張していた全身の筋肉の緊張がほぐれ、不安な気持ちが雲散霧消していく。そして弛緩した身体の気怠さにそのまま意識をまかせていれば、次第に眠くなってくる。久しぶりに覚える強烈な眠気。それは睡魔と呼ぶに相応しい。

…気づけば…朝。

清々しい目覚めの朝である。

デパスのメリットとリスク

かつては化学物質に知的財産権を認めないインドから、激安のコピー医薬品を自由に個人輸入できた。それで眠りに問題を抱える多くの人から絶大な支持を得ていたデパス。ところが2017年に厚生クソ労働省が要らん規制を発動し、この道が絶たれた。それでデパスはもはや精神科を受診してゴミクソ高い医療費を国に貢がないと手に入れられない処方薬になってしまった。

事実上デパスはもう、僕のように国民健康保険に加入できない人には手に入らない。

あの騒動でデパスの断薬に踏み切った人は多いだろう。

僕もその1人だ。

デパスの個人輸入禁止で減薬に挑戦する羽目に

デパス減薬の長く辛い道のり

とはいえ数ヶ月前に当局からデパスの個人輸入禁止は通達されており、それなら規制される前に有り金が許す限り在庫しておこうと思うのが正常な人間の判断である。僕も手元に大量のデパスを保有している。

僕は血反吐にまみれてデパス断薬に成功したにもかかわらず、今だにここぞという夜にはクスリに頼って快眠を得ている。それは逃げかもしれない。それは人生のカウントダウンかもしれない。

でも。

ここぞというハズせない日の前夜に、ただ錠剤を飲み込むだけで不安が嘘みたいに消えるのはデカいんだよ。むしろ寝られず翌日失敗してメンタルをやられる悪影響の方が甚大だ。

だからそんな夜に僕は、断薬を成功させた苦労とデパスのリスクの間でせめぎ合うことになる。

調子が悪い時に頑張ると何もかも上手くいかずデパスを欲する

デパス耐性の減衰のスピードが読めない

僕が実感するデパスのリスクは3つある。

ひとつは身体がデパスに依存してそれなしに寝られなくなってしまうこと。そのペースは思ったより早く、1週間連続でデパスに頼って寝るともうクスリ無しでは意識のスイッチをOFFにすることが出来なくなるほど。あくまで僕個人の場合だけどね。そしてそれはデパスが良く効くことの裏返しでもある。

もうひとつのリスクは、身体にデパスに対する耐性がつくことだ。だから徐々に服用量を増やしていかないと長期に渡り同じ薬効を得られない。

ただこのデパス耐性は断薬を実践しているうちに徐々に弱くなっていくっぽい。

僕がデパスを常用しなくなって1年以上経ったけど、今では以前より確実に少ない量のデパスでフッと筋肉の緊張が抜けるような効果を得られるように戻った。一方で、肩甲骨の間の背骨付近に疼きを感じ、強烈に肩がこったように感じる副作用は今だに強いままだけど。

問題なのは、どのくらいのスピードで身体のデパス耐性が逓減していくのか読めないところだ。

ここに3つめのリスクがある。

精神安定剤は休息を得たい時には心強い助けになる反面、一世一代の大勝負に挑む場面では逆効果。出るべきタイミングでアドレナリンが出ず、集中すべきところでボンヤリしてしまう。要は明日に備えてデパスでしっかり寝たのに、翌日も血中に大量のデパスが残っていて台無しになってしまうのだ。

安易にデパスに頼った顛末

翌日に残るクスリの量。これはデパスを常用していれば感覚的にわかるのだけど、僕のように2ヶ月に1回程度クスリに頼る場合は身体のデパス耐性がどの程度減衰したのかわからず調節が難しい。

以前飲んでいた量で多すぎるのは自明。だから半分に錠剤を割っても、それでも多すぎて翌日に残る血中濃度が高すぎてボンヤリしてしまうこともあれば、ちょっと多めに飲んでも効かず結局満足に寝られないまま白む東の空をみるハメになることも…。

断薬をはじめて成功した当初、向精神薬を猛毒のように感じていた。でも使いようによっては日々のコンディションを維持する大きな助けになる。

今後も出来るだけデパスに頼らずに快眠を得られるよう研究していく。でも自動的に深い睡眠を得たい大切な日の前夜には、デパスに上手に頼っていきたい。