日本は「ここではないどこか」が国内にある

安けりゃ何でもええのよ!ガハハハ!

洒落たジュエリー屋のカウンターで恰幅の良いオバちゃんがこんな風に吠えてて、やっぱ大阪は面白い。

片道3000円の高速バスに8時間揺られ、久しぶりに大阪にやってきた。新幹線は高すぎて使えない。LCCで飛ぼうかとも考えたけど、成田と関空への地上移動を考えるとかえってカネも時間もかかるんだよね。

国内移動なのにシンガポールより時間かかるとか、貧乏はツラいぜまったく。

それでも僕は帰国の度に日本各地に足を伸ばす。なんだか1カ所に長く留まるのが苦手っぽい。
どこの街に行っても特に目的もなくてくてく散歩して、鄙びた銭湯を見つけたら気まぐれに入ってみたり。

こんな風に常に動き回ってしまうのは、困った時の安全地帯「ここではないどこか」を探し求める僕の習性なのかもしれない。

多様な地域性が日本の豊かさ

もう7年前になる。

鬱で日本の仕事を辞めてから、しばらく大阪の新今宮周辺で沈没していた。あいりん地区とかドヤ街と呼ばれる日雇い労働者が集まるエリアだ。

でも当時すでに外国人をターゲットにしたホステルが増えて話題になっていたので、日本国内に居ながらにして世界のバックパッカーたちと路端で焼肉なんかして楽しかった。

こんな風に地域性豊かな日本では、困った時の安全地帯「ここではないどこか」を外国に出ずとも国内で見つけることができる。

社会の「空気」が読めるが故、地元で失敗や挫折を味わうとそのまま暮らすのがツラくなる。なんだか周りのみんなに見下されて陰口たたかれてるんじゃないかとか、根拠もないのに疑心暗鬼になっちゃうんだよね。ただの被害妄想で実際は応援してくれる人が多いにもかかわらず。

そんな時、僕のことを誰も知らない街に行くと安心する。

なんだかそれはリセットボタンみたいな感じ。下手打ってあちこち都合悪いことになってしまった人生ゲームを、シンプルで可能性に満ちたスタート地点からやり直すのだ。

そんな無責任で幼い生き方をしていたら人生ゲームをいつまで経ってもクリア出来ないじゃないか。

おっしゃるとおり。

実際に僕は三十路半ばになっても独身で、学生の頃とそう変わらないメンタリティで生きている。

でもね、失敗したら乗り越えて、嫌なことがあっても我慢。弛まぬ努力で着実に人生のステージを進めていくような、エネルギーに満ちて器用な人間ばかりじゃないんだよ。そして僕みたいな不器用な人間が無理やり器用に生きようとした結果、日本の自殺率を世界最悪に落としている。

ない袖は振れない。

僕はもう自分にも出来る生き方で生きていく。無責任でもゲームクリアに至れなくても、もう二度と病まないように生きていくんだ。

明るく親切に

大阪って日本で一番多様な街なんじゃないかと思う。

まずエリアによって雰囲気が全然違う。スーパーで売ってる食料品の価格やブランド、道行く人たちの印象、街並み。地下鉄で二駅しか離れていないのに、地上に出るとカラーの違いを強く感じる。

さらに外国人が多い。住みやすい街の世界ランキング上位に入るだけあって、観光客だけじゃなく定住してサービスを提供する側の外国人も目立つ。

それはすなわち大阪が違いに寛容ということだろう。ここでは空気感の異なる多様な地域から自分に合った場所を見つけて、そこで自分のペースで価値を生み出していけばいいんだ。

他人に優しく、明るく親切に。

大阪はどこに行ってもこれさえ満たしていれば懷深く受け入れてくれるように感じる。生きるためのハードルがどこか優しい。

だから僕はここに来ると7年前を思い出して決意を新たにすることが出来る。

やっぱ大阪に来て良かった!