興味や野望を持たないゼネラリストの強み

大学時代の友人と久しぶりに酒を飲んできた。前回の帰国で彼と会ったのは2年くらい前。哲学専攻なだけあって毎回深い話題が尽きることはなく、相変わらず元気そうで安心した。

彼の人生は、なんていうか安定感がすごい。

すべて国公立で大学まで出てサクッと公務員試験をパスして地方自治体に勤めており、そのまま同じ街で一生を過ごすつもりらしい。しかも良い感じの給料をもらっているはずなのに酒やギャンブルに溺れることもなく、クルマや家みたいなデカい買い物も本当に必要になるまで要らないと言う。

一方そんな彼の目に、僕は相当フラフラした存在として映っているだろう。語る内容や価値観が毎度ブレているのは自覚しているし、そもそも会う度に勤め先や住む国まで変わっているヤツなんてそうそういるもんじゃない。

まぁそんな感じで全く異なる方針で生きている我々だから、たまに会って話すと話題が尽きないってわけだ。

鬼の自己分析

でもその彼が公務員としてやっている業務そのものは話を聞く度に変わっている。特に大学を卒業して初めて会ったときの話が面白かった。

地域環境を整備する部署に配属された彼が最初に任されたのは、市街地に出没したタヌキを市民の苦情に従って捕獲する仕事だった。タヌキ(=^・・^=)! 哲学専攻の彼のことだ。てっきり教えを説いてタヌキを説得し穏当に山に帰ってもらうのかと思いきや、普通に罠を仕掛けてとっ捕まえるらしい(=^x x^;=) そりゃそうか。

そんで捕まったタヌキは保健所送りにされてしまうのかと心配したんだけど、なんと隣の自治体の林に捨てに行くという笑 今どきは野生動物をそんな簡単に殺せないんだな(=^・・^=)♬

とはいえもう住宅地にタヌキが住めるような場所なんてどこにもなく、でも市民から苦情が来ているゆえ市内に留めておくわけにもいかない。苦渋の選択ながら隣の自治体でも状況は同じ。だから放たれたタヌキはしばらくすると向こう側でも里に降りて再び捕まり、山林のこっち側へまたまた捨てられるという…。地図上に人間が勝手に引いた境界線を行ったり来たり。タヌキにしたらいい迷惑である。しかも何気に税金の無駄遣いな感もあるし…。

…その仕事ってやってて楽しいの?なんか意味なくない?

「正しさとか意味とか考えたらダメで、与えられたことを決まりに従って正確にこなすのが公務員なんだ」

なるほど(=^・・^;=) その後、ゴーヤを植えたりタヌキを追っかけ回す部署から移動になり、市民と接する窓口担当を経て、今彼は地域のインフラ整備に予算を工面するお堅い部署にいる。なんでも地震で学校のブロック塀が倒壊して以来、忙しい日々を送っているようだ。でもさ、無職の僕が言うのもなんだけど業務に一貫性が無いっていうか、何年やっても具体的なスキルが身につかなくない?

「俺には野望とかどうしてもやりたい仕事って無いからさ。それなら指示に従ってれば安定して暮らせる方が良いんだよ」

公務員を志した大学3年生でその境地に至るとは…達観している。

おカネを使ってする自己実現

そんな彼は週末も充実している。最近は国技館のマス席で相撲観戦にハマっているようで、ほかにもマイナーなアーティストのライブに参加したり美術館巡りに興じたり。ずばり文系男子って感じだ。

でももし僕がそんな風に芸術に興味を持ったりスポーツや音楽に憧れを抱いたら、自分でもやってみたくてウズウズしてしまう。当然そんなニワカな情熱では満足に上達するまで努力が続かず、結局は三日坊主なんだけどね。

一方、彼はライブや企画展で感動を覚えても、ちょこっと自分でもやってみようとは最初から思わないらしい。そんな中途半端にやるよりおカネを払ってプロの仕事を楽しんだほうが良いと。

なるほどね(=^・・^=)

自己実現ってやつは、なにも手を動かして職業によって達成しなくてもいいんだ。この世にはおカネを払ってする自己実現もあり、それは仕事と違ってストレスを伴わずに楽しめるところが良い。しかも贔屓の力士や歌手が有名になったりすれば満足感も得られるだろうし、パトロンとして社会や文化に貢献しているとも言える。

それに技術みたいなスキル1本で自己実現しようとするなら、今やグローバル化により世界中の猛者と戦わなくてはならない。そんな中、強い興味や野望を持たず文句を言わずになんでも器用にこなせるゼネラリストっていう生き方はひとつのスキルだ。それに変化が激しく先が見えない今後を見据え、あと自分に強い情熱がないことを自覚して地方公務員を選んだのも立派な能力といえる。

あぁ!当時酔ってひっくり返ってた僕を叩き起こしてその鬼の自己分析力を伝授してほしかったなぁ。