早期退職を目指すFIREムーブメントで幸福になれるか

北米に住む主に白人ミレニアル世代(≒ ゆとり世代)の間で早期退職が流行っている的な記事を読んだ。

30代まで一生懸命働いて倹約につとめ、1億円以上の資産を形成した後に早期退職。その後の「老後」でも金融資産の利回りや不動産収入を元手に倹約に務め、おカネがかからない質素な暮らしを楽しむのだとか。このような生き方をFIRE(Financial Independence, Retire Early = 経済的独立、早期退職)ムーブメントと呼ぶらしい。

大量消費時代へのアンチテーゼとして語られることが多いけど、要するに労働はクソ・働いたら負けってことだな(=^・・^=)♬

物価と給料が下がり続けるデフレに長年苦しんでいる日本経済からすると、30代で1億円貯めるとか真面目な話オレオレ詐欺か水素水でも売るしかない。あとは宗教法人ししもん教でもでっち上げて孤独なジジババからむしり取るか。しかも日本では例え無収入になっても年金や社会保険料の請求書が毎月追いかけてくるゆえ、低税率低福祉のアメリカとは同じようにいかない可能性が高い。

でも確かにアメリカならば、サンフランシスコでITエンジニアとして年収2000万くらいもらいつつ、シリコンバレーの郊外でルームシェアでもすれば10年以内に1億円の資産を形成することも可能かもしれない。さらにその貯金を銀行に眠らせずJohnson & Johnsonみたいな絶対に需要が減らない日用品メーカーの株を買えば、年間配当率3%を超える額を安定的に受け取ることも現実的っぽい。

実際、FIREムーブメントを実践している人の間ではこれを「4%ルール」と呼ぶらしい。すなわち元本には手を付けず、資産運用で得た4%程度の利回りだけでやりくりすれば働かずとも持続可能な暮らしが手に入るってわけ。

まことにアメリカってのは没落しても夢がある国だ(=^・・^;=)

ところがまぁ僕は怠惰なライオンだしシリコンバレーで働けるスキルもない。だから身の丈に合わせて「ししもん聖水」でも売るか、こうしてWeb広告でちょこまか稼ぐしかないけどね。

FIREムーブメントという仕事

税金天国シンガポールにはおカネが大好きな人が世界中から集まってくる。だから労働せずに利回りで生活する経済的独立(Financial Independence)を目指すってのも良く聞く話題だ。

しかもシンガポールは人口あたりの億万長者が世界随一の国であり、本当に労働しなくていい人生を達成しちゃっている人も多いんだよね。中には一族みんなそんなノリで「お前は好きなことをやって生きろ」と言われて育ったとかいう真正無敵のボンボンとかいる。まぁ日本でも政治家やってるような連中はそんななんだろうなぁと感じる今日このごろでありますが…。

別に僕は彼らと多く親交があるわけじゃないけど、それでも知っている成功者たちはみんなお金の話が大好き。あれ?今日はそういえばずっとお金の話(自慢話)だったなぁ(=^・・^;=)みたいな。確かに金融商品にめっちゃ詳しいし、実際東南アジアの金融商品にはリスクとリターンがてんこ盛りで夢がある。

それでも。

逐一スマホで株価チャートを気にしてるんじゃ資産形成が仕事のただの個人投資家。それって経済的独立とは言えないんじゃ…。

同じことは成功している北米のFIREムーブメントの牽引者たちにも言える。4%ルールと言いながら早期退職を実現するためのノウハウや心構えをブログやPodcastみたいなメディアを使って精力的に発信していて、あれはもはや仕事だしその実いい感じに稼いでおられるようだ。大卒者の多くが法外な学生ローン返済に苦しむ米国のミレニアル世代(≒ ゆとり世代)の中で、ほんとうに律儀に4%ルールの範囲だけで暮らせているFIREムーブメント実践者ってどのくらいいるのだろう…。

というのも、お金を使わず楽しく暮らすには練習が必要なんだ。

社会とのつながり

僕は貯金をすり減らしつつ人生で通算2年目の無職生活をエンジョイしているんだけど、この世は「楽しさを買うサービス」で埋め尽くされている。なにもゲーセンやギャンブルみたいな退廃的な趣味だけでなく、友達とランチしてカラオケするだけも交通費含めかなりの額が吹っ飛んでいく。

本当に4%ルールに従って、年間400万円(1億×4%)程度の支出で子育てして家族楽しく暮らすためには、外食を避けスーパーでまとめ買いした食材で友達とBBQするような工夫が求められる。それには節約生活に同調して一緒に楽しんでくれる友達(人的資本)も不可欠。これは鈴木大介氏の「最貧困女子」で紹介されている地方で暮らすマイルドヤンキーの幸せノウハウそのものだ。

この記事を書くにあたり若者の早期退職について調べていたんだけど、FIREムーブメントってもはやマーケティング用語なんじゃないかな。夢を売る自己啓発セミナー的な。それは悪く言えば少数の先駆者が大多数の後発を食い物にする構造だけど、おカネの心配をせずに自分が楽しめる活動から糧を得るのは理想的な労働の姿でもある。

僕の個人的な価値観としては、がむしゃらに資産形成してあとはビーチで酒を飲んで暮らすような人生よりも、心から意義を感じる活動から細々とおカネを稼ぎ続けた方が最終的な幸福度が上がると思う。それは意義のある活動からはおカネだけじゃなく、人的資本やスキルが得られるからだ。

長い目で考えると幸福っていうのは、社会の仕組みのなかでおカネを「使って」仲間と一緒に作っていくもんなんじゃないかな。