その昔、日本で最も魅力がない茨城県のウツ都市で働いていた頃、社内で局所的に「テラ飯」っていうのが流行った。テラ飯っていうのは大盛りを超える大盛りで、動物のエサっぽくドカッと盛られたカレーとかラーメンを見たことがあるだろう。その圧倒的サイズ感をアピールするためにご飯や麺の重さをkg単位で表現する店も。
当時在籍していた現場で大将的なポジションを占めてた先輩が「テラめし部」なるものを主催していたこともあり、僕も大食いイベントに何度か参加した。茨城みたいな人家が疎らな場所にもテラめしの店が結構存在していることに驚いたものだ。今でこそ少食や糖質制限が流行っているけど、当時は大盛りの店がブームだったんだな。
あの時の僕はウツ沼に足を取られ、もういつも通りに仕事をこなすことが難しくなっていた。
短期的な記憶力が衰えてマルチタスク機能が壊滅。頭が廻らない。そんなに難しい仕事をやっているわけじゃなく、もはや新人でも出来るタスクなのに。なぜか脳にブレーキがかかって手が止まる。これは本当に手が止まるっていう表現がちょうど良く、いつもの仕事が眼の前にあるのに突然どうやってやっていいのかわからなくなって呆然としてしまうんだ。
僕は改善しようと必死で藁にもすがる思いだった。
血糖値スパイクはアガる
完食した達成感、大食い仲間から得られる承認欲求と一体感、何より男っていう生き物は食事中は黙るので、コミュニケーションが苦手でもあまり浮かないのが良かった。
テラ飯をドカ食いすると元気になるんだ。それもテンションがアガるというのが丁度いいよな、うぇーーーいwwwな感じに。
これをシュガー・ハイというらしい。血糖値が急上昇すると脳内でβエンドルフィンという快楽物質が分泌され、麻薬を摂取したときと同じ作用が起こるのだとか。登山にはチョコレート、疲れた時は甘い物という考え方も、ここから来ていると思われる。しかもこのシュガー・ハイには依存性があって、気分が落ち気味だったり仕事の期限が迫ると、糖質で気分を正常までアゲないと取り組めないようになってくる。
そんなわけで程なく僕は気分が落ち気味なときに、テラめし部の活動がなくても独りで大盛りの店に通うようになった。そして仕事中も飴玉を舐めながらテンションを保つように…。
ところがこんな食習慣はメンタルにとって最悪だった。
大量の炭水化物を一気に摂取したことによる血糖値のスパイク、これこそがテラ飯や飴玉でアガる感覚の正体だ。そしてその後訪れるインスリンの大量分泌による低血糖と副腎疲労。これで僕は加速度的にメンタルをこじらせて、出社することもままならず程なく休職せざるを得なくなった。
自己解決を目指さず医者に頼る
その後、うつ病との戦いで僕は貴重な20代を大幅に無駄にした。このブログはあの時の体験をなんとかマネタイズして取り戻してやろうという野望でもある。
でもあれ以来、甘い物・スナック・ラーメン・うどんを突然欲したら、それが純粋な空腹なのかアガるための衝動なのか、一瞬とまって考える習慣がついた。そして往々にしてそれは「元気になるため」の疑似空腹なのである。
癌患者に栄養食品や健康器具を勧める悪徳ビジネスがようやく糾弾されるようになったけど、いまだにメンタルの病気に関しては民間療法がまかり通っている。気持ちの持ちよう、コミュニケーション方法の改善、怪しいサプリや栄養食品、そして挙句の果てには祈祷(笑)などなど。
憂鬱なときの糖質のドカ食いもその一種であり、しかも短時間は実際にアガる効果があるものだからタチが悪い。
メンタルに不調が出てきたら、それはもう病院の医療が必要な段階にある。小手先の民間療法や工夫で短期的には効果を実感したとしても、数ヶ月、数年の単位でみたら害のほうが大きかった。以前より寝られなくなったり、気分がいつもより沈みがちなら、頼るべきは安易な民間療法ではなく、病院にいる専門医である。
僕のように人生を無駄にしたくなければ症状を自覚した時点で病院に行こう。