人生コケた時のプランBを育てる3つのスキル

今から10年前、僕は24歳でうつ病になった。

その時は茨城県つくば市で技術者として働いていて夜勤もやっていた。実際には日勤と夜勤を交互に繰り返す感じ。仕事自体は全然大変じゃなく、むしろやり甲斐も感じていたのだけど。まぁ何もない陸の孤島でそんな非生物的な生活リズムで暮らしていては、いつ誰が病んだって全然不思議じゃない。

でもありがたいことに仕事自体はある程度ユルくて、とくに独り夜勤のときには深夜ラジオを流しながらのんびり作業することが出来た。

その夜、電波の入りが良かったので偶然聴くことにしたAMラジオ番組のテーマは「働くこと」だった。労働に関するその年のニュースなんかを時折交えつつ、リスナーからのお便りを読んでいく。よくあるトーク番組だけど、折しもリーマンショックが起きて間もなく、派遣切りや年越し村が社会問題になっていただけに熱いメッセージが集まっていた。

運命とは不思議なもので、この番組を聴き始めて最初に読まれたお便りが結果的に僕の人生を変えることになる。

それは香港でコールセンターオペレーターをしている女性からだった。元々沖縄にあるサポート電話のアウトソーシング企業で働いていたものの、待遇の悪さから転職に踏み切った。そして流れ着いた先が香港。日本では高給をもらえない職種でも、海外で同じ仕事をしたら給料が3倍になった。仕事は相変わらず大変だけど、海外生活が楽しいし挑戦して良かった。そんなお花畑みたいな、ちょっと怪しい話だった。そもそも香港から日本のラジオをどうやって聴いているのか。

ちなみに沖縄のコールセンターの仕事は僕が退職して失業保険をもらうためにハロワに通っていた時に見た。実際ものすごく待遇が悪くて、もう沖縄に人が住んでいる理由がわからなくなるくらいだった。

香港か。僕だって学生の頃はよくリュックひとつで海外をフラフラしたものだけど、単身海外に渡り仕事を見つけてそのまま住み着くという生き方を初めて知った。そんなことを本当にやってしまう人がいるんだ。

「僕も海外移住したい」「どうすれば」「こうすれば…いやダメだ」

それ以来、僕はこんなことばかり考えて暮らすようになった。鬱で休職したり、退職して無職になったり。いろいろあったけど、海外に新天地を見出してやるという思いは希望の光として僕の精神を支えてくれた。

いわば無意識に人生のプランBを育てていたことになる。

希望の人生プランB

「人生こんなもんじゃない」「俺だって本気を出せば」「来年こそは…」

にんげんだもの。人生そう上手くいくことばかりじゃない。修正出来るくらいの軽微な不具合ならちょっと努力すればいい。でも仕事もプライベートもガタガタでボロボロなら、いっそもうリセットボタンを押して最初からやり直した方が良いだろう。これじゃないんだ。もっとマシな人生にマルっと交換したい。

そういう人に必要なのが、代替の人生、プランBだ。仕事も住む場所もぜんぶ取り替えて新しい自分としてスタートするのだ。

でも具体的にどうやれば良いのかわからない。実際に行動を起こすに至らない。

これはもったいないことだ。

なにしろ人生は短い。僕は今年35歳でアラフォーの仲間入りをしたわけだけど、身体が自由に動いて元気に海外ノマドなんて出来るのもいいとこ残り30年くらいじゃないだろうか。

不本意な人たちと不本意な仕事をやっている時間は無い。でも不具合なノウハウが無いためにガラクタと化した人生のプランAを捨てられない。そして今日も満員電車に乗って貴重な人生を安く売り捌きにいく。

人生の不満を解消し、強気に生きるためのオルタナティブの人生。プランB。今日は人生のプランBを育てる3つのスキルについて書く。

語学と発信と貯金

じゃあ何をすべきか。僕は3つあるとおもう。

これは適当に3つじゃなく、あのラジオ番組を聞いてから僕はこの3つのスキルを伸ばしてきた。

その後、シンガポールでアルバイトとして働き、就労ビザが切れて就活するハメになり、無事にシンガポールで正社員に返り咲いた。でも5年で整理解雇に。そして今はフリーランスとしてWebサイトを作ったり、企業のWebサイトを翻訳して生計を建てている。

我ながら波乱万丈というか一貫性の無い人生…。しかもこの先もどうなるのかもわからない。なにしろフリーランスだから雇用契約もないし、どこの国にも税金を納めていない関係で国家の社会保証の類も何もないのだ。

独身ノマドが税金・年金・健康保険を払わず合法的に南国で暮らす三種の神器

でも全然恐れず毎日元気に暮らしている。

それは今でも心にプランCを温めているからで、そのための準備である次の3つの行動をずっと続けている。

①語学

まず絶対に必要なのが語学だ。別に海外に出たい人に限らない。今とは違う人生を得たいなら、まず最初に外国語を勉強するのが一番オトク。

なにしろ言葉が出来れば、それだけ自分の価値を見出してくれる雇用主やお客さんの範囲が直接的に、もう超広がる。日本語しか出来なければ日本の日本企業に雇われるしかないし、起業やなにかフリーランスをやろうにも、日本人しかお客さんに取れない。

これが例えば英語がある程度出来れば、まず日本にある外資企業が射程に入るし、海外の転職エージェントに登録することだって可能だ。それに高い教育を受けた世界の金持ち層は英語話者が多い。だから例えばネットでなにか売ろうと思った時に英語が出来ると可能性が広がる。

あとはなんと言っても中国語がアツい。なにしろ中国だけじゃなく世界中に中華系の人たちが散らばっている。フィリピンやタイでは現地経済を牛耳っているほどだ。彼らと中国語で喋れたらむしろ仕事が見つからないのが不思議なくらい。

シンガポール現地採用を経て中国深センで日本語教師になった星乃雪さん

中華系○○人のコミュニティで外国人として暮らしたい

その上で、日本人に話者の少ないマイナー言語は最強かもしれない。特に英語に次ぐ話者数を誇るスペイン語は、海外でめっちゃ使われているのに日本人で喋れる人が少ない。大穴言語をモノにすれば語学一本で食べていくのも夢ではないかも。

スペイン語とメキシコ現地採用の経験を武器に活躍する休憩中の旅人さん

世の中には猫の手も借りたいくらい忙しい人がたくさんいて、言葉が通じれば誰かしら声をかけてくれる人が現れる。なにしろ相手は日本人に限られないのだ。世界は広く、人口は多い。

学習費用が安く、収入に直結。語学は最ものコスパが良い勉強だ。なお僕が6ヶ月・3万円でシンガポールの米系企業で面接を突破するレベルの英語を身に着けた方法はこの記事にまとめてある。

うつ病社畜がSkype英会話を使って6ヶ月・3万円で英語を身につけた方法

②業務スキルの発信

さて。とはいえ年食ってから語学をやったところで、せいぜい深夜の牛丼屋で働いている外国人の日本語くらいにしか上達しないかもしれない。イラシャイマセ!僕の英語だって同じようなもん。ハリウッドスターやハリーポッターみたいに喋れるようになるには一体どうしたら良いんだろうねぇ…。

だから僕は純粋に語学だけを武器にできない。おカネを頂くには他に何か業務スキルが必要になってくる。

そこで一番簡単なのは、今やってる仕事、または大学で専攻してたスキルを伸ばすことだ。

特に海外に出ると、学位と職歴の関連性はとても厳しく見られる。僕など工学部卒で有機化学専攻なのにプログラマーとかIT業界での職歴しかなかったので、まずは書類をごまかすのに苦労したし、面接まで進めても必ず突っ込まれる。しかもかなりキツく突っ込まれる。一貫性がない人物と思われるらしいけど、実際その通りなのだから説得するのに本当に困る(=^・・^;=)

当然、書類も面接も英語だ。あるいは現地語かもしれない。語学に自信がないなら尚更、ここらへんの身辺はスッキリ美しく保っておきたい。

でも…。

こんなブログを読んでいる人は、もう今の仕事を辞めたくて辞めたくてしょうがないかもしれない。それで今更仕事を頑張れとか言われても困っちゃうだろう。

大丈夫。僕だってシンガポールで勤めたのも、今のフリーランスの仕事も、学位も職歴もなんの関連性もない業界だ。要は運が良かった。

でも運任せの場合、絶対に重要なことがある。それは勉強していること、仕事にしてきたこと、これから仕事にしたいと思っていることを、積極的に世界中に発信しまくることだ。SNSでも良いし、ブログでもいいし、人付き合いが大丈夫なら憧れの業界のオフ会とかに無理やり参加するのも良いだろう。

兎にも角にも。自己満足の趣味じゃなく、おカネを頂く仕事につなげようというのだ。どんなに頑張ってどんなスゴいスキルをつけようと、誰かに知らせなければ仕事は来ない。逆にすごく大勢に自分の存在を知らしめれば、そこまで大したスキルを持っていなくても声をかけてくれる人が出てくる。

僕の場合は世界を放浪している時に日本のゴミクソ労働環境の愚痴を言いふらしていた。そしたら「シンガポールで働きなさいよ」「ここは良いわよ」とアルバイトが決まったし(実際めっちゃ良かった)、かつて入れ込んでいたTwitterとこのブログがフリーランスの仕事を頂くのにとても役に立っている。

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愚痴をいったりネットに書き殴ってるだけでも仕事がもらえるのだ。今すぐなんでもいいから精力的に自分がどんな人物で、どんなことをやってきて、そしてこれからどうしたいのか、世界に発信していくことが重要だ。

継続的に発信し続けられるのは最早必須のスキルである。

③貯金

貯金はスキルだ。

おカネが貯まらない人は徹底的に貯まらないし、貯められる人はどんどん貯まるらしい。別に収入が多いわけじゃない。単純に貯金が上手なのだ。僕は…たんまり溜め込んでいるわけじゃないけど、いまの生活水準なら2年くらいは仕事しなくても東南アジアで食っていけるだろう。

アジアの同僚たちが全く貯金してないことがレイオフで判明した

貯金はプランBの人生に漕ぎ出す上でとても重要だ。預金通帳に書かれた数字は、そのまま将来の可能性を示している。その数字が大きいほど大きく挑戦できるし、その結果大きくコケても貯金があれば大丈夫。

逆に先立つものがないと、プランBへの挑戦期間が限られてしまう。僕の経験上、無職は恥だが癖になるとばかりに半年くらいフラフラしていると、いつでもどこでも意外となんとかなってしまうような感覚を持っている。でも半年の挑戦期間を得るには、それがダメだったときのバックアップ期間も同じくらい確保したい。だから挑戦の半年と、ダメだったときの再就職期間の半年。

合計1年分食いつなぐだけの貯金が必要だ。

具体的な額は生活水準による。僕は東南アジアなら半年どんなにカツカツでも100万円くらいは使ってしまう。そしてあまりに貧乏でもチャンスが到来した時に上手く掴めないかもしれない。

僕は日本で働いていた時はシェアハウスに住んで海外に出るおカネを貯めた。ビールやタバコみたいな嗜好品をコツコツ削るのではなく、まず真っ先に削減すべきは家賃だ。貯金したいなら古くて狭い部屋に引っ越すのが一番効率的だと確信している。

孤独を愛し孤立を避ける。シェアハウスに住んでお金を貯めるススメ。

なお今も僕は安いAirBnBの民泊物件に住んでいるし、それに加えて税金や社会保険料を一切払わないことで、その分を貯蓄している。年金機構に預けても老人飼うのに浪費して運用で溶かす。自己責任で自己防衛するしかない。

独身ノマドが税金・年金・健康保険を払わず合法的に南国で暮らす三種の神器

貯金は挑戦するための必須スキルだ。

プランBがあると強い

僕はうつ病になり追い詰められるように人生のプランBを発動せざるを得なくなった。

あの深夜のラジオ番組を聴いてから10年。ようやく自分の人生を自分のチカラで切り拓いているような気がする。満足感と、どうなってもなんとかなるだろうという自信。また困ったらまたプランCに挑戦するだけだ。

現状にしがみつく必要がないのは、とても大きな安心に繋がる。そのために必要なスキルは次の3つだ。

  • 語学
  • スキル発信力
  • 貯金

もし今の毎日に満足していなくて、人生をすり減らしているなら。この3つのスキルを伸ばして、人生コケた時のプランBを育ててはいかがだろう。