検索で情報を取るのは欠点を探すバイアスがかかり国際交流に向かない

バリ島の観光地って白人が勝手に想像する「アジアン」を島を挙げてプロデュースしてるだけなんじゃないかって気がしてきた。

この島にバリ・ヒンドゥ教を中心としたオリジナルな文化が根付いていることは確かだけど、ふらりやって来たガイジンが英語でいい加減に触れられる「バリっぽさ」なんてのは、所詮は巧妙に設計された集金システムでしかない。

浅草で売ってるゲイシャ人形みたいなもんだ。

例えばちょっと高価なバリ土産として有名なガムランボール。銀細工を施したウズラの卵くらいの金属のボールなんだけど、これを振ると外見からはちょっと想像できない澄んだ音がカランコロン鳴る。英語で瞑想ボールとか言われることもあるコイツ、実はバリ島に縁もゆかりも無い。だから当然バリ・ヒンドゥの僧侶がガムランボールで瞑想修行に励むようなこともないし、そもそもバリ島で売られるようになったのもここ数十年のことだという。だからそもそもバリ人がガムランボールの存在を知らない…。

北海道のレアチーズケーキみたいなもんか。

しかも僕は寺院とか川下りとか猿山とかに一切興味がない。棚田とか、米じゃなくせめて麦芽とホップを育てるべきだ。あと猿山じゃなくてネコ山かウサギ山なら良かったのにな。ハムスター山でもいい。バリ島のサル達には、もうちょっとあどけない可愛さを身につけるべく、引き続き進化を頑張ってほしい。

その上、僕はここ最近は自分を律するためにクジゴジは完全なシラフで仕事に励むことにしている。しかもゴジまでにはとても終わらず土日もなく社畜もビックリな時間までパソコンに向かっている日も…。

もはや何のためにバリ島に1ヶ月もいるのかわからなくなってきたよ。

ヒトは見た目が100%

とはいえ。

部屋に引きこもって社会から完全に孤立するのはマズい。引きこもり体質の僕でさえ、さすがに1週間も人類社会との接触を絶つとだんだん精神が膿んでくる。一時は人間相手は面倒くさいからサル山から性格が良さ気なのを一匹もらってこようかと思ったくらい。

こういう時、ホステルのドミトリーは良い。人類と接触したくなったら、1階に降りれば暇してる言葉が通じるおサルみたいなのが絶対いる。

基本的にどこの国でもホステルっていうのは動物園のサル山みたいなもんで、この地球上で繰り広げられる人類の営みの縮図。すなわち人間模様を観察するには最適で、ホステルに泊まれば世界情勢を肌で感じることができる。次のG20はホステルで開催すべきだ。

そんな僕が長年のホステル暮らしで学んだ見識の1つは、残念ながら人は見た目が100%ってこと。

ホステルで人間観察していると、人種の壁は絶望的なまでに高いことが伺える。異国で出会った同邦で固まるのは当然としても、例えば日中韓は例えコミュニケーションに少々難があっても黄色民族どうしで仲良くなる。自分と同じ見た目の人間に囲まれるということは、言葉が通じるよりも安心できるのだ。これはヨーロッパ白人も同じで、英語がおぼつかないロシア人とかでも白人のグループに混ざろうとする。

そしてホステルで形成されるこの黄色と白の2つのグループは、残念ながら容易には混じり合わない。人類を隔てるのは言葉の壁ではなく、見た目の壁なのだ。

そんなわけでロビーでカタカタ仕事しているときに僕に声をかけてくれたのも、韓国人のチェだった。

彼は僕よりちょっと年上で、アラフォーど真ん中。見た目も振る舞いもジャイアンで、威勢がよく面倒見がいい大将って感じ。ソウルで仕事を辞め、次の職を探す前にふらり旅に出たのだそう。旅の醍醐味はどうやら風俗めぐり。病気にならないと良いのだけど(=^・・^;=)

このジャイアンが暇してそうな黄色に手当たり次第に声をかけ、飲み仲間に引き抜いているっぽい。僕がビール片手にジャイアングループに参加したときには、中国人のワンがちょうど仲間に加わったところだった。

彼はまだ若い中国アモイ出身のバックパッカー。大学を出て勤めた空港地上職員の仕事を2年で辞め、これまた女好きで夜な夜なクラブでナンパしてまわってるっぽい。見た目も性格もスネ夫で、財布をちら見したところ札がビッチリ詰まっていた。親が太いのかもしれない。長い物に上手に巻かれるタイプで、言葉もろくすっぽ通じないくせに本当に上手にジャイアンに取り入る。彼は体育会系の組織で成功するタイプだな。

そこに風俗ジャイアンのメガネにかなった韓国女子2人が加わり、シズカちゃん2人体制の奇妙な日中韓ドラえもんグループが形成された。

ちなみに僕はのび太である。

共通言語がない気楽さ

まぁ僕は昼間は仕事があるし、観光客である彼らも何が楽しいのか昼間は川下りとか猿山に出かける。夜は夜とて僕を除く男性陣は下半身に忙しい。だから夕方になると三々五々集まって、完全に日が暮れるまでドヤドヤ2時間くらい飲み歩く習慣が出来た。

ただ、日中韓ドラえもんグループには大きな問題がある。全員が理解できる共通言語がないのだ。

ジャイアンとシズカちゃん1号は完全に韓国語オンリー。ふと、このジャイアンはどうやって僕を誘ったんだろうと思い返すと、言葉で拾えたのは「・・・イルボンサラ・・・?メッチュ・・・マシム・・・?」の3単語だけだった。コミュ力に長ける人物が繰り出すボディーランゲージはものすごい。

スネ夫は中国普通話と閩南話と呼ばれる福建省の言葉のバイリンガルながら、英語で雑談はとても無理。そして僕は日本語と英語と、若干の中国語普通話。

従って、とりあえず喋りたがりのジャイアンを中心に韓国語で話題が進み、それを微妙に英語が話せるシズカちゃん2号がNever翻訳を駆使して僕に伝え、それを僕が筆談を交えた中国語でスネ夫に通訳するという、奇妙な伝言ゲームになった。

ところが僕の語学力はというと、日本語を100%とすると英語は50%、中国語に至っては3%くらい。もうね、スネ夫がいたたまれない。哀れな彼は話題の1%も理解出来なかったと思う笑

ただ、共通語がないのは良い面もある。

深く話せないがために、当たり障りのない無害な空気が形成されるのだ。

折しもG20が大阪で絶賛開催中。もし威勢のいいジャイアンや、小賢しいスネ夫が流暢に英語を喋ったら…。懸案に事欠かない日中韓が集まって、そこに酒まで入れば、政治や歴史やイデオロギーの話で衝突するのは目に見えている。島や海の名前なんかで揉めながら旨い酒が飲めるハズがない。それに英語が出来る韓国シズカちゃん2号とは結構深く話したんだけど、彼女は中国人がかなり嫌いだ。あの調子だと僕に直接は言わないけど日本人だって嫌いなタイプじゃないかと思う。

でもみんな、一人旅の寂しさと不安を紛らわすため「だけ」にココにいる。

それは民族主義とか相手を論破するような承認欲求ではなく、もっと生存に関わる根源的な渇望といえる。自分も相手も参加目的がハッキリしているからどう振る舞うべきかわかりやすい。この複雑なニュアンスを伝える必要がない当たり障りのない会話に、仕事漬けで膿んでいた僕はずいぶん癒やされた。

インターネットを通じて世界中の出来事を即座に自分の言葉で吸収できちゃうのは、隣国と「とりあえず」つるむ弊害になっているように思う。最初から相手の全てを知ってしまったら、そりゃもう嫌なところばかりが目につくのは当たり前。人間とは良い面を見つて共感するよりも、鼻につく欠点をあげつらう方が簡単に出来ているのだ。

そんな醜い生き物が、欠点だらけのお互いを認め、かろうじて折り合いをつけていくには。まずは情報ゼロの状態からグダグダ始めるのが有効だと思う。

検索を駆使してオンデマンドに情報を取るのは、欠点を探す方向にバイアスがかかりやすく国際交流に向かない。

※ドラえもんグループのその後についてはこちらっ

性別や年齢で暗黙の役割が決まる狭い社会の崩壊