開発独裁国家から趣味人の天国になりつつあるシンガポール

「Jewelはこちら」

10ヶ月ぶりにチャンギ国際空港に降り立つと、イミグレに向かう道中これでもかってくらいJewelの看板が貼られていた。Jewelって何ねん(=^・・^=)?とはいえここまでゴリ押しされると特に興味がなくても行ってみたくなる。

なにしろ入国管理のマレー系オバちゃんに聞いたらタダらしい。

チャンギ国際空港はシンガポール中心部から電車で30分。東京で言えば羽田みたいな巨大な国際ハブ空港だ。そのド真ん中に、天井から40mの滝が落ちる丸ごと芸術品みたいなショッピングモールをぶっ建ててしまうとは。

シンガポールのスケールには度肝を抜かれる。Jewelがチャンギ空港のどのくらいド真ん中かというと、4つあるターミナルのうち3つから徒歩で行けるレベル。まぁ軽く痩せそうなくらいに歩かされることは否めないけど…。

頼もしい面積単位である東京ドームと比較すると、シンガポールのJewelは約2.8倍。東京ドーム3個弱である。僕はこれでも日本人の端くれなので、巨大施設を見たら東京ドームと比較しないと不安で不安で夜も眠れない。あ、でも僕は数学は得意なんだけど算数は苦手なので、賢いこのブログの読者の皆様は検算をお願いしますん(=^・・^;=)

そんなことはどうでもいいとして。

やっぱシンガポールはスケールが違う。

管制塔の真下。東京ドーム3つ弱の面積を、50年も前にガバチョと確保していた都市計画がヤバい。当時はジャングル辺境の田舎空港だったのに。いままで駐車場として使われてきたらしいけど、将来然るべき時が来た暁には、シンガポールの国力を象徴する建物をぶっ立てる計画があったことは間違いない。

とはいえこのブログの読者さんは9割以上、日本に住む日本人だ。イマイチこのスゴさがわからないと思う。

そこで参考までに、お隣の「The 修羅の国」マレーシアの国際ハブ空港を見てみよう。LCCの草分け「エアアジア」の拠点であるクアラ・ルンプール国際空港。そのど真ん中では…。

ヤシの木が元気に成長中。

いやいやいやい(=^・・^;=)

いくらパームヤシが国の重要産業だとしてもだよ、わざわざ国際空港の滑走路のド真ん中でプランテーションしなくてもいいじゃんね。なんかもっと作るべきもんがあるじゃんよ…。

んー。

えーと。

モスクとか(=^・・^=;)?

まぁ彼の修羅の国は「最後の神判」を乗り越えた死後の世界を夢見て生きている人たちの国なわけで…現世の空港みたいなつまらんモンにはこだわりがないのかもれない。言って飛行機なんて落ちなきゃいいわけで。まぁ修羅の国の飛行機はガチに墜ちたり消えたりするから洒落にならんのだけど…。

気を取り直そう(=^・・^=)♬

それなら成長著しいインドシナ半島の経済首都、バンコクはどうだろう。次は微笑みの国のドンムアン国際空港の滑走路を見てみよう。

いやいやいやい(=^・・^;=)

北朝鮮御用達。一度廃止されたくせに新空港スワンナプームが汚職でグザグザすぎて再利用せざるを得なくなったこのグソグソ空港の真ん中にあるのは、ゴルフ場なわけでしゅ…。

大迷宮ドンムアン空港からの脱出

まぁ。総じて東南アジアの都市計画ってのはこの程度なのである。なお誇り高き我が日本の某国際ハブ空港のど真ん中にあるのは、根腐れテロリストが立て籠もるアジトなのだけど…。

失敗できないシンガポール

シンガポールがスゴいのは「発展せずショボいままだったらどうしよう」的な弱気マインドが都市計画に一切見えないところだ。世界に誇る経済一流国に、近い将来必ずや君臨する。だから失敗したときのバックアッププランなど用意する必要はない。強気に国家目標を実現する政策を着実に推し進め、ガチにマジに世界史に名を刻む奇跡を起こした。

やっぱシンガポールはスゴい(=^・・^=)♬

ただその犠牲は大きかったとも言われる。男子には徴兵制が敷かれ、小学校の成績で人生が決まるといわれる苛烈な受験戦争が今でもある。なにより。僕の視点で言えば、自国に不満があるなら海外に出てなんとかするっていう価値観を、社会制度で徹底して潰されているのがキツそうに見える。

なにしろネイティブ英語に加えて中国やインドのアツい言語とのバイリンガル。さらに大学ランキングで1桁に入るような学歴を備え、有名な国際企業でインターン経験まである。

シンガポールの新卒若者は、世界のどこでも通用する超一流エリートである。

勝ち組の条件が明確な社会は幸せか

なのに、彼らの多くは卒業後にシンガポールで就職する。

社会制度に根ざした様々なシガラミにより、シンガポール人は長期にわたり国を離れて好きなことをするのが難しい。シンガポール人ならシンガポール国内で上手く生きていくのが合理的になるように、綿密な社会制度が作られているのだ。

だからか、シンガポール人はエリートほど慎重だと感じる。冒険をしない。着実に成功が見込める方向に一点集中して猛烈に努力。その結果、最短最速、最大効率で「最高の勝ち組」を掴み取る。

こうした敗者復活戦が許されない社会制度が「キアス」と呼ばれるシンガポール人気質に繋がっていると僕は思う。

シンガポール人気質「キアス」

個性的な趣味の店が急増するシンガポール

まぁ結局、ゆりかごから墓場までの苛烈な競争で、個性を伸ばす「ゆとり笑」がない。だからみんな押しなべて金太郎飴みたく没個性的で面白くない。

これが7年前、僕がバックパッカーとしてシンガポールにやってきたときに聞かされた「シンガポール人の評価」だった。

ところがですよ。

今回僕がシンガポールにやってきたのは、新しいパソコンを注文するためだ。フルオーダーメイドのパソコン。なにしろフリーランス、海外ノマド稼業にとって、パソコンは商売道具、絶対的な生命線である。その生命線の商売道具をフルオーダーメイドするのに、調べた結果アジアならシンガポールが最適だという結論に達したのだ。

敬虔な林檎教信者である僕は、いままでは何も考えず神殿(アップルストア)に行って、ADHDの教祖(ジョブズ様)の有り難い教えに従い、何十万もお布施(最新MacBook)するのが常だった。ところが彼はもういない。膵臓癌でガチにマジの神様になってしまった。東南アジアの真っ暗な空に赤い星を見つけるたび、その星の右上が欠けているように見える。僕はそのくらい狂信的な林檎教信者なのである。ただの乱視かもしれない。

ところがですよ、ティム・クック。てめーはダメだ。ついでにアイブ、お前もダメだ。もうお前らが牛耳る林檎にはついていかねー。シンガポールに神殿を作って僕におもねっても無駄だぜ。

あーもう、そんなことはどうでもいいとして。

とりあえずですね、徐々にWindowsとAndroidの世界にライフ・シフトしているししもんなのであります。それでね、ここからが重要なんですが、シンガポールにはAfterShockっていうベンチャー企業がありまして。この会社がスゴいんだ。

カスタムメイドのパソコンショップにも関わらずオンライン販売が基本。でも長いこと使うパソコンだけに、やっぱ実物を触ってみたい。そういう人はシンガポールに行けば実店舗もある。

工業団地の中に。

日本で言う工業団地は田んぼを潰した平野に低層の工場が林立しているイメージだ。あとそんな工場周辺のアパート郡を指すこともある。

でも土地が限られるシンガポールでは、町工場だって高層ビルに仲良く入居しているんだよね。雰囲気としては立体駐車場。むき出しのコンクリートで殺風景に建てられた10階くらいのビルに、日本で言えば大田区に集積しているようなガテン系二次産業が所狭しと入居している。ガチで「工業」の「団地」なのだ。

そんな所にITベンチャー企業がブティックショップを構えているのだから面白い。

というのも、シンガポールの貸店舗は家賃が高すぎる。参考までにJalan Besarという下町にあったホステルの賃料は、月額50万円くらいだった。あれから6年経った今は更に値上がりしていると思うし、そこに水道や電気代が加わる。この猛烈な固定費をペイできる企業は本当に限られる。高い賃料とその上げ幅が、シンガポールのスタートアップ企業の可能性を潰しているとも言える。

そこで工業団地なのである。

AfterShockはオーストラリアにも進出したらしけど、基本的にターゲット顧客はシンガポールに住む若者。シンガポールにやってくる外国人観光客は眼中にない。地元シンガポール人ならば。良いものを安く作れば不便で見栄えの良くない工業団地にだってやってくるハズだ。

これが見事に当たっている。

オンラインゲームに特化したハイエンドモデルがズラリと並ぶ店内には、平日の閉店間際にも関わらず若者で賑わっていた。店員さんも若い。もう三十路半ばだと肩身が狭いくらい。

それもそのハズ。同じスペックならMacBook Proの半額以下。最新Core i7、RMA32GB、SSD1TBにすると1/3くらいかもしれない。さらに自分でGPUを増設できる拡張性まで備える。こうなると日本の格安ブランドとも比較にならないくらい安い。

普通のオフィス仕事には必要がないハイスペックの趣味パソコンを求める人々がこんなにいるなんて。僕は軽く感動した。わざわざシンガポールに来てこの店でオーダーしてよかった。

工業団地で成長するシンガポールのテックベンチャー。

他にもNull Audioがある。これはオーダーメイド高級イヤホン「カスタムIEM」の草分け。ほぼ修羅の国、シンガポールのガチ郊外、クソ不便な場所にある会社なんだけど、日本で秋葉原のeイヤホンとかに手数料を払って作るより格段に安くカスタムIEMを手に入れることができる。何しろ代理店を挟まないメーカー直接注文だ。英語に不便がない人は海外旅行ついでに是非挑戦してほしい。

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聴覚過敏な僕の音楽デバイスとイヤホン遍歴(有線編)

他にも僕がバイトしていたJalan Besarには熱帯魚屋が出来ていたし、地元産のクラフトビールがホーカーセンターの屋台で売られていたり。

シンガポールの成長速度は経済に留まらず、文化的な成熟もクソ速い。

確実にもうシンガポールを没個性的な国とは言えない。一度離れて外から客観的に見るとほんとそう思う。今後もシンガポールから目が離せない。