スゴい仕事はその国だけでスゴい。内装工事業でオランダ移住どう?

日本はゴールデンウイークの真っ最中。日本のお客さんを多く抱える海外フリーランス稼業にとって、日本の連休は稼ぎ時である。

まず、日本在住の同業者たちはカレンダーどおりに休暇をとる人が多いため、稼働している競合他社が減る。さらに社員に法定通りの休暇を取らせるために、普段は社内のメンバーで廻しているような作業を、コンプライアンスの外側にいる海外フリーランスに任せる場合も。

そんなわけで、日本の連休中はカレンダーに従わない海外フリーランスに仕事が集中するわけだ。

ありがたや(=^・・^=)♬

おかげさまでオランダ移住2年目も仕事の面では一切不安がない。これは相当に幸運なことだと思う。

そう、幸運。僕の実力は大したことないので、ラッキーだったというしかない。

そもそも国際人材と自称できるほど僕はエリートではない。学歴も大したことないし、日本での職歴、シンガポールでの業績だって、もう一度日本で転職活動するハメになったら相当苦労することが予想されるスペックである。

ウツで退職して失った「働く自信」はアルバイトで好きなことして回復した

20代の前半は青春18きっぷで国内貧乏旅行を繰り返したり、お金が溜まると格安パックの航空券で韓国インチョンや中国上海まで飛び、そこから長距離LCCに乗り換えて北米やヨーロッパをバックパッカーで巡るような暮らしをしていた。

だから無論、海外にいる時間は大好きだったけど、海外に住む、海外で働くなんて20代半ばまで夢にも思っていなかった。なにしろ日本でさえサラリーマン生活に適応できてないのだ。そういうのはスゴい人の人生だろうと決めつけて、意識さえしなかった。

スゴい仕事はその国だけでスゴい

そんな頃合いで騙し騙し続けていたサラリーマン生活がついに破綻し、うつ病、アル中、無職というトリプルコンボで人生が詰んだ。

カネが無いので実家にお世話になったけど、東京のベッドタウンというのは無職には厳しい社会である。不登校児が引きこもりに昇格するのも頷ける。「普通」から外れた生活リズムを持っていると、例えば20代の無職が昼間からウロウロしていると、通報されかねない雰囲気が充満しているのだ。

実際近所をウロウロしてるだけで職質されたし。職業を持てない人間に職務を質問するとか、まじ鬼畜の所業である(=^・・^#=)

郊外で無職は生きにくい。都会にこそ多様性と包容力がある。

だから東京都心に月1万円で借りられる自習室を見つけ、そこにカタチだけ「出勤」することにした。

けど、自習室でやることがない。うつ病の脳というのは、想像以上に機能がぶっ壊れているのだ。とりあえず中小企業診断士という謎の資格教本を癒しの殿堂ジュンク堂で買ってはみたものの、なぜ中小企業を診断するのかも理解できなかった。

人生詰む前に大型書店に行って選択肢を増やす

というわけで時間を持て余したのをいいことに、当時にわかに流行り始めていたTwitterという新興SNSに登録して「無職なう」とか、つぶやき始めた。無職の既定路線である。

当時のTwitterはリツイートボタンとかなく、「RT」と手動で打ち込む非常に原始的な仕組みだった。んで、やっとこさリツイートを投稿すると「アカウント名の@は消さないで!」とか先人から怒られツイートが返ってきたり、そういえば「QTって何ですか?」ってQTで質問した記憶もある笑

黎明期のTwitterは「たまには日本語しゃべりたい」欲を爆発させた海外在住の日本人で満ちていた。海外生活の鬱憤や、現地人の理解できない行動パターンなんかを皮肉交じりに展開する先人たちの暮らしぶり。

カネと健康に見放されて海外など遠い彼方に吹き飛んでしまった僕は、羨望と絶望が入り混じった目で彼らの発言を観察していた。

そんな中、バズってる海外ユーザーをフォローしまくるうち、めいろまさんに出会った。

イギリス在住のめいろまさんの当時の連投を要約すると、こんな感じ。

いわゆるエリートの海外就職、海外移住はむしろ少数派で、例えば欧州への移民の多くはガテン系の技術職である。中でも配管工と電気工事士の需要は高い。日本で手に職がある人は、語学スキルを積み増せば同じ仕事を欧州で出来るかも。カナダやオーストラリアみたいな移住にポイント制を採用している国でも、サラリーマンよりガテン系の技術職の方が評価が高いケースもあるぜ。

ま、まじ(=^・・^;=)?

オランダのヤバい住宅事情

オランダは慢性的な住宅不足にある。

近所を散歩していると「TE HUUR(賃貸物件)」とか「TE KOOP(売り物件)」と張り出された物件を頻繫に目にするけど、翌日には「VERKOCHT(売約済み)」になってる。オランダの人口は一貫して増え続けているので、空き家が出たら賃貸だろうが分譲だろうが、速攻で埋まるのだ。

ところが、こうした物件の多くが築100年とか、場合によっては300年とかである。

旅番組なんかでアムステルダムの傾いたダンシングハウスを見たことがある人も多いと思う。あれ、外見はおしゃれだけど、住むとなったら大変。地震がないことも相まって、日本だったら姉歯も真っ青なガタガタ物件なのである。

滑り出し順調なオランダ生活とヤバい住宅事情

築120年ほどの我が家の床も、ビー玉が転がるどころか、ローラーブレードを整備しているとべイアリングが転がっていく。さらに壁も床もグザグザで、ご近所がタバコを吸うと速攻で匂いが漏れてくる。

でも一番ヤバいのは水回り。

普通に使っていても目に見えない位置のパイプから水が漏れて下階に謝りに行くことになったり、台所の排水溝が完膚なきまでに詰まるのは日常茶飯事である。っていうか、ほぼ詰まった状態で前の住人が出て行って、誰も確認しないまま次の人に貸している。

はぁ…(=^・・^;=)

そんなわけで、オランダの住宅不足に関しては、僕のような新参者も頑張ればオランダで家を見つけることができる。けど、住宅の質というさらなる問題が入居した後に待ち受けているのである。

そんな時、頼りになるのが便利屋(Handyman)と呼ばれている内装工事業の人たち。彼らは大家もしくは管理会社と契約しているっぽく、大家に不具合を告げるといつも同じ人が来てくれる。

ししもんの巣を担当しているのはペーテルというアラフォーの男性。僕の家は完膚なきまでにグザグザなので、パイプやら壁やらでこの1年に何度出動を依頼したか知れない。

僕は家で仕事しているし、根が引きこもりなので夕方以降もほぼずっと家にいる。だからペーテルが近所の仕事で空きができたら、きちんとアポも取らずに突然修理に来てくれる流れが出来た。というのも、正式にペーテルに依頼するとなると、何週間も待たされることになる。

そう、めっちゃ需要があるのだ。

そりゃそうだろう。オランダ中に姉歯真っ青物件が乱立し、時々刻々とさらに老朽化している。おそらく数秒ごとに、どこかで水が漏れ、パイプが詰まり、フレームが歪んでドアが閉まらなくなっているハズ。

だから移民を入れてでもペーテルのような内装工事のプロを大勢確保しないと、オランダの伝統的な街並みが崩落してしまう。なにしろ外国人排斥を訴える極右の家でも、水が漏れ、パイプが詰まり、フレームが歪んでドアが閉まらなくなっているに違いないのだ。

内装工事屋のペーテル

そう、ペーテルというオランダでありふれた名前で呼ばれているから、彼のことをずっとオランダ人だと勘違いしていた。でも実は彼自身がルーマニアという東欧の国からやってきた移民1世だったのだ。

入居当初に大家とペーテルの3人で修繕計画を話し合った時も、僕のために英語に切り替えてくれているものと勘違いしていた。でも実際は彼自身がオランダ語を流ちょうには解さないのである。

通りで背が低いわけだ。

世界一の身長を誇るオランダにあって、彼の背丈は僕よりも低い。たぶん165センチくらいじゃなかろうか。ロシアなどスラブ系の血をひいているハズなんだけど、東欧諸国の人たちはアジア人くらいに背が低い印象。

風呂のパイプが詰まった際に、水酸化ナトリウムで髪の毛などを溶かす薬剤のパッケージをGoogle翻訳アプリで確認していて、「なんでオランダ語を翻訳してるのさ」って聞いたら、「いや俺、ルーマニア人だし」とか言い出して、

えっ(=^・・^;=)!

えっ U^ェ^U?

ってなった。

ペーテルから詳しく話を聞くと、ルーマニアのガラチという国境の小さな町で営んでいた商店を畳み、奥さんと2人でオランダに移民してきたらしい。2009年。ルーマニアがEUに加盟した直後である。

ルーマニアというと、ドラゴンが住んでる国としてハリーポッターに登場するくらいしか印象がない。

僕がそう言うと、「ドラキュラ伯爵は知ってるだろう」、「あれは大昔にいた残虐なルーマニア王がモデルで、殺した敵兵を血を抜いてから街道に晒した実話なのさ」、「当時のルーマニアにはケツから口まで串刺しにする刑罰があった」、「今でも占星術とか呪術が一般的で魔女として営業している人もいる」、「魔女は政府公認の職業だから魔力が弱いと顧客から訴えられることも」とか、クソ面白い話を始めて、結局その日はパイプが治らなかった(=^・・^;=)

「ルーマニアって実はローマ人っていう意味なんだ」、「その昔イタリア半島から攻めてきた軍隊が、美しい国に魅了されてそのまま住み着いたのが始まりなのさ」、「だからルーマニア語が話せればイタリア語は簡単」

ルーマニアの歴史は侵略と戦争の歴史である。その度に外部の人種を内包し続けた結果、ルーマニア人は世界の中でも複雑に血が混ざった民族といわれる。

「敵が祖国を忘れて住み着くほどに美しい国なんだけど、悲しいかなルーマニアは経済がダメでね」

地政学的にロシアの影響をモロに受け、一時は共産主義国家となった。その影響からか、今でも国内には稼げる仕事が少なく、EU加盟も相まって裕福な西側諸国に移住する人が絶えないのだとか。

「もともとカネが無いもんで、家の修理は自分でする仕事なんだ。オランダじゃぁ、それで食えるっていうんで、ガラチの商売を畳んで、とりあえずオランダで内装業をやることにしたんだよね」

その後、オランダで1児のパパになり、腕一本で家族を養っているのだから見上げたものだ。

そこそこの技術+日本人の几帳面さ=最強!?

でも、実のところ、失礼がなら彼の内装工事の腕前はイマイチである。我が家のパイプも1発で治せないばかりか3回目の工事でようやく水漏れが止まった。正規に予約していたら完工まで1か月はかかっただろう(=^・・^;=)

それでも彼が人気の職人であることは疑いようがない。たまに近所で見かけると奥さんと小学生くらいの息子さんも総出で外壁のペンキ塗りをやっていたりする。

「1人雇いたいくらい忙しいんだけどね、カネがかかるから家族に頼むしかないよw」

すげー。めいろまさんが昔言ってたことは紛れもなく真実だった。ビザが何とかなる場合、エリートがサラリーマンとして移住するよりも、ガテン系の技術職が最強なのだ。

さらにパイプの詰まりを一発で治せる技術力と、時間通りに仕事をこなす几帳面さを備えれば、まさに最強 of 最強なんじゃあるまいか。なにしろ日本国籍をもっていればオランダのビザは何とかなってしまうのである。

人口が減り続ける日本の労働市場は、今後さらに需要が減って過当競争が加速する。圧倒的な買い手市場で労働者は大切にされないのだ。

手に職があるのに仕事に愚痴ばかりの人は、語学だけ頑張ってオランダに新天地を見つける人生はいかがでしょうか。

縮みゆく日本を脱出して努力が報われる環境を多民族国家に探しに行こう