オランダから撤退するIT系フリーランスすみやさんのインタビュー

4年前、シンガポールに住んでいた時は、僕が把握している東南アジアや海外就職の知識を前提に、現地で暮らす日本人にインタビューして、これから海外路線の人生を同じように目指す後輩に少しでも道を示したいと行動していた。

ところがコロナ以降、海外就職や海外移住のハードルが格段に上がってしまった。もはや日本で行き詰ったら海外を目指せば良いぜなんて、気安く言えない状況にまでなったと思う。

ただ僕自身は、なんとかかんとか異国の地オランダで、脱サラ フリーランスとしてコロナ渦をサバイバルできた。めっちゃ大変だったけど、少なくとも日本で自殺願望を抱いたほどの苦しさではなかった。

所詮は難易度の高いクソゲーといったところだ。

でも漫然と3年も住んだにもかかわらず、コロナのせいで、オランダの人達や社会について何もわかっていない状態になってしまった。オランダ社会や現地の労働環境について肌で感じるチャンスを、度重なるロックダウンで奪われてしまったのだ。

中国と武漢には是非ともぺんぺん草も生えないレベルに衰退していただきたい(=^・・^#=)


これまでもオランダに在住したり、オランダから撤退する日本人達にインタビューするチャンスはあったんだけど、いかんせん僕自身がオランダのことを何も分かっていなかった。

オランダ語も皆目わからなかったし。

国土が小さく、なんだかんだ華僑の価値観が主体であるシンガポールと比べると、オランダ社会は地域ごとに、人種、主教、歴史が重層的に入り組み、時に隣国を交えてそれらが激しく対立し、オランダ社会の複雑さは圧倒的なのである。

そんな自分のオランダに対する考えが固まっていない状態で「オランダどうですか?」なんて質問できないし、こうして記事にまとめることもできない。

だからコロナの諸規制が完全に撤廃された2022年は、僕にとって2年遅れでやってきたスタートダッシュの年だった。

年収は半減してしまったけど、仕事に費やす時間を犠牲にしてでも地元の人たち、特に僕と同じような移民1世2世に的を絞って行動を共にし、突貫工事ながらオランダで暮らす(自分に近い)先輩移民が抱く「オランダ感」をおぼろげに掴むことに成功した。

オランダ語も、なんとなくだけど、簡単な内容なら理解できるまでになった。

そんな折、オランダ移住インタビューの第一号として今回登場していただく、すみやさんが移住してきた。彼はUIデザインやブロックチェーン技術を専門にしている、IT系ノマドである。

オランダ移住インタビューの第一弾として、シンガポール版と比べると僕の技量のせいで稚拙な感が否めないけど、予てより情報が少ないオランダ移住の実際について、小さな一石を投じられれば幸いです。

オランダ在住ITノマド、すみやさん

では、すみやさん、よろしくお願いします(=^・・^=)♬

すみやさん
はい、よろしくお願いいたします。

なんか僕らの経歴って似ているんですよね。

日本産まれ日本育ちで、日本の大学を卒業後に日本企業に就職し、まぁ労働環境が合わずに退職。その後の活路をシンガポールに見出して6年ほど働くも、またいろいろあって脱サラを成功させ、オランダに再移住。

まずは日本脱出につながったエピソードを教えてください(=^・・^=)♬

すみやさん
ホント、偶然ですね。

私は大学で映画とか映像制作を専攻していたので、卒業後はテレビコマーシャルの制作会社に入りました。肩書はアシスタントプロデューサーでしたが、労働環境は絵に描いたようなブラックで、パワハラが横行していました。

たとえば時間に関係なく、案件が完成するまでは家に帰れないのが普通でした。仕事が終わっても上司の説教というか暴言に付き合って朝5時まで飲んで、それから4時間後の朝9時に出社。人間は3時間寝れば生きられるというのが社内の定説になっていて、それを信じるしか生き残る道がない会社でしたね。

日本企業の悪いイメージそのまんまですね(=^・・^;=)

すみやさん
当然の結果として、フィジカルとメンタルが限界になって退職しました。4月に入社して翌年2月に退職なので、だいたい10ヶ月の新卒社会人経験でした。

日本企業で働いたら、その時点で人生の敗北(=^・・^#=)

それでシンガポールに活路を見出したわけですね(=^・・^=)♬

すみやさん
昔から海外に憧れは持っていましたが、荒唐無稽というか無理筋だろうと考えていました。

でもTwitterでシンガポールの求人を見つけて、日本語メインの仕事だったんです。それで応募したらトントン拍子に話が進んで、あっさりシンガポールで海外就職できちゃいました。

しかも、なんだかんだ居心地が良くて、結局6年もシンガポールで働きました。

凄まじい突破力(=^・・^=)!

ってことは僕らは同じ時期にシンガポールにいたんですね。オーチャードやドビゴあたりで、すれ違ってたかもしれない笑 ただ、お互いに現地の日本人コミュニティを避けていたっぽいので、シンガポールで出会わなかったのはある意味必然かも笑

すみやさん
ですね笑

ただ、シンガポールでは日本語中心の仕事をなさってたということで、そこから脱サラして海外ノマドになり、オランダに移住するためには、少なくとも英語力が必要ですよね?

すみやさん
英語は独学で頑張りました。シンガポールの仕事はシフト制で決まった時間に自由になれなかったので、語学学校に通うのも現実的でなく。

日本で買った英単語帳でひたすら語彙を増やして、職場の同僚と実践で会話力を高める…みたいな感じです。

それを6年も続けて英語に自信がつくにつれ、海外志向が強まっていきました。このまま日本に帰らなくても、海外で自分の能力を活かせるのではないかと。

それでヨーロッパに目が向くわけですね(=^・・^=)♬

すみやさん
あの頃はドイツのフリーランスビザに興味があったんですが、要件が自分に合ってなくて。

ドイツ国内のクライアントが2社以上必要ってやつですね、あるあるの断念理由(=^・・^=)笑

すみやさん
フリーランスとして独立するためには、英語に加えてIT系の技術力も高める必要がありました。シンガポールの仕事は具体的な技術力を伸ばせる環境ではなかったので。それでドイツのコーディング ブートキャンプに参加することにしました。

ほほう(=^・・^=)♬

すみやさん
ドイツのブートキャンプに参加すれば、プログラミング スキルを身に着けられて、ドイツのIT業界にもコネクションを獲得できるかもしれない。コース修了後はそのままドイツで転職できるかもしれないという期待があったのです。

その結果としてシンガポールからは撤退という運びになりました。

先見の明があるというか、次に進むべき道が明確になったんですね(=^・・^=)♬

すみやさん
ところが、そのタイミングでコロナ到来です笑

ありゃー(=^・・^;=)

すみやさん
もともとの計画では、30歳目前のギリギリ ワーキングホリデービザでドイツに移住して、ブートキャンプで技術を身に着けつつ、1年かけて転職活動する目論見だったんですが、コロナでドイツがロックダウン。

ドイツに入国できず、すべてがご破算です泣

ふええ(=^・・^;=)

すみやさん
しかも、この時点でシンガポールの会社には退職願を提出していたので、今さら戻ることもできず…。まぁそれ以上、その会社に留まる意欲がなかったというのもありますが…。

それで先が見えない状態で日本に帰国しました。

ふええ(=^・・^;=)

すみやさん
狙っていたドイツのコーディング ブートキャンプには、結果的に日本からオンラインで参加できたのですが、しょせんは仮想イベント。そこからドイツでの仕事に結びつけるのは困難でした。

そのコーディング ブートキャンプで基礎的なITスキルを身に着けることができましたが、でもドイツの転職にはつながらなかったので。

仕方ないのでオンラインで見つけたカンボジアの日系ベンチャーIT企業に、フリーランスとして参加しました。

相変わらず物凄い行動力(=^・・^=)!

すみやさん
カンボジアの案件は、東南アジア諸国にいる技術者を管理する仕事、いわゆるブリッジエンジニアというやつですね。

でも僕が本当にやりたかったのは、もっと実践的な技術仕事だったんです。それでLinkedInで見つけた台湾の仕事も、オンラインで半年ほど掛け持ちしました。これはAIを活用したビジネスで、僕が担当したのはサポート業務でしたが、AIとか新しい技術に実務で触れる機会を得られました。

それが今の稼業につながってくるわけですね(=^・・^=)♬

すみやさん
そうです!

台湾の友達のつながりで、カナダ企業のフロントエンジニアの求人を紹介してもらったんです。UIのデザインと構築という仕事ですね。収入がある程度良かったこともあり、この仕事を軸にノマドになることに成功しました。

それからオランダにつながってくるわけですね(=^・・^=)♬

すみやさん
ですです。

インターネット越しにどこからでも働けるとなると、どこの国に行こうかということになります。もちろん、もともとはやはりドイツに行きたかったのですが、この段階でもドイツの要件は満たせませていません。私のお客さんはカナダとか台湾ですので笑

それで国内顧客の要件がない、オランダに移住することにしたんです。

めっちゃわかる笑

実にあるあるですね。僕もオランダを選んだのは同じような消去法でした。やっぱドイツ、フランス、英国など「大国」の方が将来性がありそうですもんね。

大国の方が、語学の教材も豊富にそろっている。キクタンシリーズに、ブラジル ポルトガル語まであるのに、オランダ語がないのには絶望したよね。

すみやさん
それでも、ししもんさんもオランダに移住したんですね。

まぁ僕は昔から薬物依存な性分なので、オランダは欧州屈指の薬物天国というか、暗黒面として世界的なコカインとメタンフェタミンの卸売問屋なので、「オランダでなくちゃ!」という理由はすぐに見つかったんだよね。

幸か不幸か、行くところに現金持って行けば、合法違法問わず何でも手に入る。この前手に入れたキノコなんて、めがっさスーパーマリオみたいなノリでさぁ…

すみやさん
薬物はどうでもいいです笑

あ、そう(=^・・^;=)

ただまぁ、観光で安易に大麻とか体験した印象から、実際に長期間住んで都にするところまでは、大きなギャップがあるんですがね(=^・・^;=)

すみやさん
僕の場合は観光でもオランダには来たことがなかったんです。

そもそも移住先として狙ってたのが、まさにドイツ、フランス、イギリスみたいな大国で、言い方は悪いですが小国であるオランダには、何か思い入れがあったわけじゃなく…。

それでも、消去法的に実際にオランダに移住してみて、普通の平和な街角で、昼間から強烈にマリファナ臭がするのは衝撃的でした笑

大麻いいぞ、少なくとも酒よりは健康的だぞ(=^・・^=)♬

すみやさん
僕は酒もあまり飲みませんが…。

あ、そう(=^・・^;=)

1年未満とはいえ、オランダでの生活はいかがでしたか?

すみやさん
僕は大学で映画とか映像表現を専攻していたので、オランダから映画の本場フランスに遠征したのですが、特にパリでの体験を踏まえるとオランダは圧倒的に安全ですね。

マリファナは臭いですが笑、どこへ行っても街は平和です。

道行く人たちも親切で、何か困っていると英語で丁寧に助けてくれます。これって欧州域内でも特別なことだと感じました。

そんな平和なオランダでITノマドを体験した感想はいかがでしたか?僕らの後に続く後輩ノマドに、何かアドバイスはありますか?

すみやさん
僕はオランダ人の友達をほとんど作れなかったので、オランダ移住に向いているのは、内向的というか、孤独に強い、独りが好きな性格の人なんじゃないかと思います。

オランダの印象悪っ笑

すみやさん
それに加えて、ITノマドとしてオランダに移住するのは、正直お勧めしません笑

フリーランスは宿命として不安定ですし、フリーランスとしてオランダで事業を運営するコストは馬鹿になりません。さらに税金も高い。そのうえ言葉が通じない海外で、となると、社会的に孤立してしまう。

僕はもっと、もくもく会というか、技術系のイベントに参加してスキルとコネクションを広げていきたかったんですが、IT系スタートアップの聖地、ベルリンと比べると、オランダのテック事情は数段劣ります。

オランダの印象悪っ笑

まぁ僕の個人的な印象だけど、具体的な目的をもって神風特攻していけば、オランダの人たちは具体的な結果を返してくれると思うんだけどな。

すみやさん
それは僕も感じています。

とはいえまぁ、伝統的なオランダ系の白人WASPオランダ人の友達は、3年住んだ僕にも数える程しかいないし、圧倒的マイノリティな僕に興味を示して週末も遊びに誘ってくれるのは、主に中東イスラム圏の移民1世2世ばかりですが(=^・・^;=)

すみやさん
ししもんさんのコミュ力は方向性からして謎です笑

ではまぁ、ここじゃない感から、オランダ撤退を決意した感じでしょうか?ここから次の人生はどうしますか?

すみやさん
AIの仕事で台湾に関わるうちに、台湾移住のビジョンが沸いていきました。台湾で出会った人たちが温かくて、ゆくゆくは台湾に移住できればと考えています。

なるほど。この時期、冬服の台湾女子は良いね(=^・・^=)♬

同じ中華系でも、シンガポール女子は自分が着たい服を似合うかどうかは関係なく気ままに着てるけど、台湾女子は自分に似合う服を分析したうえで注意深くコーディネートしている感がある。

つまり冬服の台湾女子は正義(=^・・^=)!

すみやさん
どうでもいいです…。

いまの僕の状態では、台湾のゴールドビザを取得するために、もっと年収を上げる必要があるので、とりあえず日本に帰国して修行しようと決心しました。日本で暮らした方がオランダよりも貯金できますし。

日本から台湾進出の足掛かりを整えていきます。

これが本当に上手くいくかわかりませんが、とりあえず好機というか、やってくるチャンスを逃さずに、挑戦を続けてみます。

なるほど、桃源郷は世界のどこにも存在しないと思うけど、台湾を住んで都にできるといいね(=^・・^=)♬

現状維持の我慢は、努力ではない

すみやさんは、タロットカードでいうところの「愚者」がピッタリな人に感じた。

ライトノベル『氷菓』にも登場するとおり、タロットの愚者に馬鹿という意味はなく、感性と直感に導かれるまま、必要に応じてリスクも取りつつ、自分が信じる道を模索していくような生き方を表す。

ユダヤ密教の概念、セフィロトの樹で、愚者は神に最も近い存在でもある。

つまり感性と直感に導かれるままに実績を重ねていくのは、新しく人生を切り開き、既存の社会通念を打破した自由な生き方を模索する過程で、多くの人にとって必要な段階だ。

僕自身、シンガポール撤退を決意してから、ITノマド、フリーランスとして生計を立てられるようになるまで、同じような「愚者」のステージを経験した。

日本で日本の公教育を受けると、現状を維持するための我慢を、努力と勘違いするようになる。これはある種の洗脳だ。

でもコロナをもってしても止められなかったグローバル化の潮流を鑑みるに、現状維持に固執した生き方は、中長期的にジリ貧である。

『不思議の国のアリス』に登場するトランプの女王様が言う通り、現状に留まるためには常に動き続ける必要がある。つまり、世界が圧倒的スピードで変化している現代において、現状のスキルや社会的地位にとどまっていては、世の中の変化から置いてきぼりになり、相対的に貧しくなってしまうのである。

そういう意味で、シンガポール現地就職や、オランダ海外ノマドを達成しても、それに甘んじることなく次の地平を求めて行動し続けるすみやさんの生き方は、僕のようなフリーランスや、これからそれを目指す人達にとって、示唆に富んでいると思う。

このインタビューが、フリーランスでオランダ移住を目指す人達の参考になれば幸いです(=^・・^=)♬